『孫文の義士団』(テディ・チャン)

孫文の義士団

「一人の女に命を懸けるだけの価値があるのか?」
「明日はどうなんだ?その価値があるのか?」

一言で言えば、孫文の1時間の滞在時間を守るため名もなき人々がそれぞれの想いを胸に散っていくという、もう展開だけで一番泣けて燃える話。

今までUPしてきた作品と違って、ドニーさんは別に主役ではなく、あくまでも群像劇の中の一人にすぎません。

その群像劇を彩るのが、超豪華な顔ぶれ。
冒頭ジャッキー・チュンがちらっと顔を見せたかと思ったら、贅沢にもヤムヤムを使い捨て、レオン・カーフェイ、エリック・ツァン、フー・ジュンにばっちりと脇を固めさせ、さらにレオン・ライにニコラス・ツェーときて、ファン・ビンビンが花を添えたかと思えば、結局メインはワン・シュエチーという、なんなんですかこのありえないほど豪華な顔ぶれは!

役柄的なものもありますが、さすがにこれだけのメンバーの中に入ると、ドニーさんといえども目立ちません。

ドニーさんのアクションに痺れるよりも、ワン・シュエチーとエリック・ツァンの会話に痺れ、レオン・カーフェイとフー・ジュンの会話に圧倒され、ワン・シュエチーとレオン・ライの会話に胸を痛め、ワン・シュエチーが中華鍋を振る姿に泣けるという、凄まじい映画。

138分の大作ですが、孫文が到着して怒涛のアクションが始まるのが80分を過ぎてから。
その後の順に仲間が散っていく展開ももちろん燃えて泣けますが、それまでの前半80分の方がずっと素晴らしい。

劇場が襲撃されるシーンは1箇所あるものの、他は派手なアクションシーンなんか全然ないのに、ドラマだけで80分、これでもかと魅せられます。
『ダウンタウン・シャドー』の監督でもあるテディ・チャン、いつの間にこんなに凄い監督に!?

トーさんの映画でも毎回食事の場面は名場面ばかりですが、この映画の食事の場面も屈指の名場面。

自ら腕を振るい、みんなが楽しそうに食べているのを、じっと見つめるワン・シュエチー。後半の死闘よりもよっぽど泣けます。
こういうなんでもないシーンをちゃんと描けるテディ・チャン監督、素晴らしい!

孫文の義士団 テディ・チャン

食事のシーンといえば、ワン・シュエチー一家の食事のシーンの描写も毎回素晴らしいですが、ちゃんと心を描いているからこそ、親子のただのこんなシーンにすらぐっとくるものがあります。

孫文の義士団 ワン・シュエチー

後半の死闘も、主要メンバーは、別に孫文や革命のために命を賭けてるわけじゃないんですよね。

それぞれ、そんなものよりももっとずっと大切なもののために命を賭けていて、だからこそ余計に泣けるわけですが、その大切なものを、じっくり時間をかけて描いているのが前半の80分。

ここで冒頭の会話に戻りますが、明日命を預けるその仕事は、その大切なものに見合うだけの価値があるのかと。
でも、聞きはしたものの、価値があるかどうかすら問題ではないんですよね。

その証拠に、守る相手の名前すら聞かず、「一番の難所」を自ら引き受けたレオン・ライ。
これで明日やっと自分は自由になれる、その機会を与えてくれてありがとう。そこには、孫文や革命なんか入り込む余地すらありません。

孫文の義士団 レオン・ライ ワン・シュエチー

もう一人孫文も革命もどうでもいいのが、ニコラス演じる車夫のアスー。
ご主人様が喜ぶ顔が見たい、坊ちゃまの喜ぶ顔が見たい、ただそれだけ。
思いきってご主人様に仲人を頼んで許してもらった時の、あの嬉しそうな顔!

孫文の義士団 ニコラス・ツェー

このアスーが恋をする、写真館の娘チュンを演じるチョウ・ユンがむちゃくちゃ可愛い。
『導火線』に続いて相変わらずファン・ビンビンは凄く綺麗ですが、今作は彼女がヒロインでしょう。

孫文の義士団 チョウ・ユン

女性陣では、ヤムヤムの娘を演じたクリス・リーも大活躍。
映画初出演の歌手みたいですが(主題歌も担当)、アクションも動けてますし、結構出番も多く、最後にはちゃんと見せ場も。

そして、後半の怒涛のアクションシーンなんですが、一人、また一人と暗殺者の手にかかり、それでもなんとかつないできたバトン。
しかし、徐々に守りも手薄になり、迫る暗殺者の集団。いよいよ万事休すか…。

とそこへ、待ってました!
そうです、「一番の難所」を自ら引き受けたレオン・ライ、満を持しての登場!

孫文の義士団 レオン・ライ

先ほどのむさくるしい顔とは違って、しっかり髭も剃り、いつものかっこいいレオン・ライです。
しかも、武器が鉄扇というところがたまりません。
アクションの最大の見せ場はここ。今回に限って言えば、ドニーさんよりもずっとかっこいい。

危ない危ない、この勢いだと何から何まで書いてしまいそうですね。まだ公開中ですので、これくらいにしておきます。
こんな文章を読む時間があったら、未見の方は今すぐにでもぜひ。

クレジットは最初ですが、今回はドニーさんはあくまでも脇役。
ワン・シュエチーがメインの傑作群像劇。

大傑作。

[原題]十月圍城
2009/中国・香港/138分
[監督]テディ・チャン
[製作]ピーター・チャン
[アクション監督]トン・ワイ
[スタントコーディネーター]谷垣健治
[音楽]チャン・クォンウィン/ピーター・カム
[出演]ドニー・イェン/レオン・ライ/ニコラス・ツェー/ファン・ビンビン/ワン・シュエチー/レオン・カーファイ/フー・ジュン/エリック・ツァン/サイモン・ヤム/ジャッキー・チュン/クリス・リー/チョウ・ユン/カン・リー

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