『恋におちたシェイクスピア』(ジョン・マッデン)

恋におちたシェイクスピア

シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』誕生の背景には、彼自身の恋物語があったという設定で作られた作品。
シェイクスピア自身の現実の恋と、劇としての部分が交錯しながら映画は進んでいきます。

初めは喜劇として書き始めた『ロミオとジュリエット』が、現実の恋に絶望したシェイクスピアによってあの悲劇へと姿を変えていき、ヴァイオラは実は『十二夜』のヒロインの名前であり次回作へとつなげるなど、憎いほど唸る脚本。
シィクスピアがスランプに陥るという設定も見事の一言。
アカデミー脚本賞も当たり前の出来。

ほんとにあの『ロミオとジュリエット』が恋人同士の会話から出来たのかと、そう思わせてくれるだけでも素敵。

恋におちたシェイクスピア グウィネス・パルトロー ジョセフ・ファインズ

テンポ感が抜群で、笑いもちゃんと入っており、それを支える音楽も素晴らしいです。

シェイクスピアに扮するのはジョゼフ・ファインズ。どこか三枚目の彼がいい味出してます。

ヒロインにはグィネス・パルトロウ、初めて彼女のこといいと思えました。
乳母の「あたらしい一日ですよ」に対する「あたらしい世界よ!」に拍手!

それでも、この映画はなんといっても個性的な脇役陣。
実在の人物と架空の人物が入り乱れていますが、誰もが魅力的。演じている役者もたまらない顔ぶれ。

実在の方からは、実在の当時の大スターネッド・アレンにベン・アフレック。
彼が金貸しのフェニマンに言う「口を出さずに見てろ、天才が歴史を創る場を目にできる」は、たった一言でシェイクスピアの凄さを言い表して見事。

そのネッドが所属する劇場“ローズ座”の劇場主ヘンズローにジェフリー・ラッシュ。
彼の口癖「謎だが、うまくいく」は言う度に笑わせてくれる台詞。

さらに、たった10分弱の出演時間でオスカーに輝いたジュディ・デンチ。
アカデミー賞授賞式でも流れた「Too late,too late.」は有名。
彼女がウェセックス卿に対して言った、「実らぬ恋の結末は、涙ながらの旅立ち」も印象的。

恋におちたシェイクスピア ジュディ・デンチ コリン・ファース

この映画で一瞬誤解されたように、死んだのがマーローではなくシェイクスピアだったら、マーローが世界最高の劇作家として後世に残っただろうとまで言われる、当代一の劇作家クリストファー・マーローにはルパート・エヴァレット。
彼の死を伝え聞いた皆の喪失感が、いかに彼が凄い作家だったのかを見事に物語っていました。

トマス・ケントが女であるとばらす血を見るのが好きな少年が、シェイクスピアの後輩劇作家ジョン・ウェブスター。
ここらへんは、ほんとに人物の登場のさせ方が絶妙。

一方、架空の人物の方では、ヴァイオラの婚約者ウェセックス卿にコリン・ファース。
今回は典型的な憎まれ役ですが、演技は見事。

高利貸しフェニマンには『フル・モンティ』で上司役だったトム・ウィルキンソン。
冒頭にはヘンズローを拷問するなど、典型的な高利貸しですが、実は芝居を何よりも愛していて、傑作が出来上がっていくその様子は、彼の満足そうな表情に見事に描かれています。
シェイクスピアから薬屋の役までもらって大喜び。しかも、本番ではアドリブをきかせてシェイクスピアをびっくりさせるなど、大好きなキャラ。

ここまででも最高の顔ぶれですが、ここにさらに、劇中の乳母役に『ブラス!』のジム・カーター、ヴァイオラの乳母役に、シェイクスピアはシェイクスピアでもケネス・ブラナー作品の常連であるイメルダ・スタントンときては、イギリス映画好きにはよだれがでる顔ぶれ。よくぞここまで集めてくれました。

そして、個人的には、しばらく恋愛感情自体がどこかにいっていたところに、久しぶりに恋っていいなあと思わせ、また人を好きになる楽しさを思い出させてくれた作品。

いつ見てもワクワクそしてドキドキさせてくれ、豪華な俳優陣の演技も十二分に楽しめる、そんな素晴らしい1本です!

 

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[原題]Shakespeare in Love
1998/アメリカ/123分
[監督]ジョン・マッデン
[出演]グウィネス・パルトロー/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ベン・アフレック/ジュディ・デンチ/トム・ウィルキンソン/ジム・カーター/イメルダ・スタウントン/ルパート・エヴェレット

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