『ロード・トゥ・パーディション』(サム・メンデス)

ロード・トゥ・パーディション

今回の1本は、『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督作品です。
正直『アメリカン・ビューティー』はそこまでいいと思えなかったので、今回は豪華俳優陣の競演を楽しみに見に行きました。

アイルランド系マフィアの幹部サリヴァンが、組織内の裏切りで妻子を殺される。
長男マイケルとともになんとか難を逃れたサリヴァンは、組織が放った殺し屋マグワイヤの襲撃を交わしながら、復讐の機会を伺うが…。

先ほど『アメリカン・ビューティー』はそこまでいいと思えなかったと書きましたが、この作品は十二分に見応えのある作品でした。

父と子のドラマという作品ですが、ギャング映画といえばギャング映画。
ギャング映画ではあの『ゴッドファーザー』があるため、どれも二番煎じでしかもレベルが落ちるという感じになってしまいますが、この作品は『ゴッドファーザー』に迫れるかどうかは別として、十二分なレベルの作品だと思います。

まずは、この手の映画にありがちな過激な描写を省き、抑えた演出をしているということ。

前半の重要なシーンでもあるあるシーンでも、銃を乱射しているにもかかわらず、その映像は映さず覗き見ている少年の視線から描いています。

その他の場面でも、映像による過激な描写は極力避けられています。
その代わり音での演出はド迫力です。そのバランスが素晴らしいです。

そして、映像の素晴らしさも特筆ものです。
撮影監督はあの『明日に向かって撃て!』でアカデミー賞撮影賞を受賞し、その後7回もノミネートされ、サム・メンデス監督と組んだ前作『アメリカン・ビューティー』で2度目の受賞を果たした名匠コンラッド・L・ホール。
ブルーを基調とした全体的に薄暗い映像ですが、映像美という点だけでも十分に楽しめます。

ロード・トゥ・パーディション サム・メンデス

そしてなんといっても、この映画の最大の見所は豪華競演陣。

まずはトム・ハンクス。この映画では表情だけで見せるのが難しかったと本人も語っていましたが、口数も少なく、表情だけで見せることの多い難しい役柄を見事に演じています。
まだまだ年というには若いですが、十分貫禄が出てきました。

ロード・トゥ・パーディション トム・ハンクス

しかし、貫禄という意味ではポール・ニューマンの敵ではないでしょう。渋すぎます!
『明日に向かって撃て!』や『スティング』など、生きながらにしてすでに伝説となっている彼ですが、今回も存在感は圧倒的です。
どんなシーンかは秘密ですが、「お前でよかった」、いいシーンでした。

ロード・トゥ・パーディション ポール・ニューマン

さらに、ジュード・ロウ。『スターリングラード』では伝説のスナイパーでしたが、今回はトム・ハンクス扮するサリヴァンを狙う殺し屋。
相変わらず彼は目がいいです、目に迫力があります。こういう役にはもってこいです。

ロード・トゥ・パーディション ジュード・ロウ

その他息子マイケル役の子役も涙を誘う見事な演技ですし、ポール・ニューマン扮するマフィアのボスの息子役、組織の幹部役などなど、みんな最高の演技です。

惜しかったのは少しラストが見え見えだったことくらい。
それでも、十分に見応えのある2時間でした。

そして、父と子のドラマというのがキャッチコピーのこの映画ですが、一番はまずサリヴァンと息子マイケルの絆というのでしょうが、実はもっと見所があるのはサリヴァンとポール・ニューマン扮するルーニーの方の親子関係。
こちらは実の親子というのではありませんが、こちらの方の関係にこそ見所があります。

最後に、パーディション、英語ではperditionですが、映画の中ではサリヴァンと息子が目指す町の名前として登場します。
彼らの今の世界とは別世界の夢のような場所。

『パーディションへの道』、それが表向きなんですが、perditionは単語としての意味はそれとはまったく正反対の意味を持っています。

知らずに見た方がいいかと思いますので伏せておきますが、見終わった方はぜひ調べてみてください。
なるほどと納得のタイトルでした。

 

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[原題]Road to Perdition
2002/アメリカ/117分
[監督]サム・メンデス
[撮影]コンラッド・L・ホール
[音楽]トーマス・ニューマン
[出演]トム・ハンクス/ポール・ニューマン/タイラー・ホークリン/ジュード・ロウ/ダニエル・クレイグ/スタンリー・トゥッチ/ジェニファー・ジェイソン・リー

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