『ワンナイト イン モンコック』(イー・トンシン)

ワンナイト イン モンコック
大陸からやってきた殺し屋フー(ダニエル・ウー)。
腕は立つものの、人を殺したことなどない田舎の若者。
チンピラにからまれていた娼婦タンタン(セシリア・チャン)を偶然救う。

お互いに大都会香港にやってきた大陸の田舎者、しかも近くの村の出身ということを知り、一気に心通わせる二人。

大陸出身者というのが、この映画の1つのポイント。
フーとタンタンだけでなく、フーに殺しを仲介した男(ラム・シュー名演!)もフーと同じ村の出身者。

ワンナイト イン モンコック ラム・シュー

男がフーを警察に売ろうとしたので、男に拳銃を突きつけつつ、「村のみんなに洗いざらいバラしてやる」と迫るフー。

「お願いだ、家族は何も知らん。俺を殺していいから…殺せ…家族には言うな」

男にとっては、殺されることよりも、田舎に残してきた家族に今の自分を知られることの方が耐えられないこと。
このシーンは泣けます、まさかラム・シューに泣かされるとは!

チンピラの仕返しから逃れながら、殺しの任務に向かうフー。
彼の正体を知ってしまったタンタン。
一度は逃げようとするものの、もはや離れることができない。

フーが恋人を探していることも知っている、愛情とは違う、それでも離れられない。
それはまさに“縁”。

ワンナイト イン モンコック ダニエル・ウー セシリア・チャン

フーが雇われた原因は二大組織の抗争。
これを機に、殺し屋と共に組織のボスも逮捕しようとする警察。

しかし、ミウ警部はどこか情熱を失っていた。
犯人を逮捕することよりも、事件を解決することよりも、仲間の命を守ることが大切だと思うようになっていたからだ。

仲間はもちろん、たとえ犯人であろうと、人の命を奪うということが、人が死ぬということがどういうことかを、彼は身をもって知ったのだ。
『ダブルタップ』で大勢の仲間を殺され、さらにリック(レスリー・チャン)を射殺したあの時に…。

取調室で「人殺しの感覚は?」と尋ねたミウ刑事に、あの時リックは言った。
「知りたいのか?いつか教えてやる」

同じ道は進まない、そう心に誓っても、そのリックを殺し自らも同じ道に。

今度も同じことを繰り返すのか、またも部下を失うのか、部下にも人殺しの十字架を背負わせるのか。
いや、そんなのは自分一人でいい、皆が無事に家に帰れたらそれでいい。

ワンナイト イン モンコック アレックス・フォン

クリスマス・イヴの夜、ついに掃討作戦が始動する。
コードネームは「ワンナイト イン モンコック」。
運命のその時がやってくる…。

いつの日か、ミウ警部の心が安まる日はやってくるのか。

「香港はなぜ“香る港”なの?」
タンタンの一言が胸に突き刺さる…。

※これからご覧になる方は、先に『ダブルタップ』を観ることを強くお勧めします。
『ダブルタップ』を観ていると、ミウ警部の台詞一つ一つの重みがかなり違うと思います。

 

ワンナイト イン モンコック [DVD]

[原題]旺角黒夜
2004/香港/110分
[監督]イー・トンシン
[音楽]ピーター・カム
[出演]ダニエル・ウー/セシリア・チャン/アレックス・フォン/ラム・シュー

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