『ニノチカ』(エルンスト・ルビッチ)

ニノチカ
前回に続いてエルンスト・ルビッチ監督作品。そして、観たくて観たくてしょうがなかった作品、ついに観れました。

観れない間に期待は高まるばかりでしたが、噂に違わぬ、期待以上の、文句なしの傑作。
唸るような演出と、粋な台詞の洪水、いやぁこれは凄いです。

「“サイレン”は美人を意味し、“消灯”は空襲の為ではなく、素敵な恋の象徴だった。よき時代のパリの話」というとても素敵な字幕で始まります。

帝政ロシア時代の貴族から没収した貴金属を売りに、パリにまで来たソ連の貿易委員の3人組。
この3人のキャラがとにかく面白くて、一流ホテルに一人ずつ様子見に入ってきては出て行くオープニングから、思わずニヤリのラストまで全編ひたすら笑わせてくれます。

社会主義国家の役人にも関わらず、祖国の悪口を言いたい放題の3人組。
フランスの宝石商に足元を見られている3人、ちょっとお待ちをと席を外してひそひそ話をするシーンのこの会話。

「足元を見てる」
「受け入れるしかない」
「まだ結論は早い。我が国の威信を示さねば」
「じゃあ あと10分示そう」

こんな感じで全編に渡って台詞の素晴らしいこと!

ニノチカ ルビッチ

そんなでたらめな3人を許せず、本国が派遣してきたのが、ガチガチの社会主義者の特別全権大使ニノチカ。どんな話にもにこりともせず、生まれて以来一度も笑ったことがないんじゃないかと思わせられるくらいです。

そんなニノチカに恋したのがプレイボーイのフランス貴族レオン。ニノチカのあまりの堅物ぶりに驚くものの、徐々に彼女に惹かれていった彼は、ただひたすら口説きます。

ニノチカ グレタ・ガルボ

でも、パリのプレイボーイをしても、ガチガチのニノチカの牙城は崩せず、噛み合わない2人の会話がたまらなく笑えます。

「ニノチカ 私を好きだね?」
「容姿には嫌気がしないわ。白銀はきれいだし、角膜も正常」
「君の角膜も素敵だ」

「聞こえた?」
「12時ね」
「真夜中だよ。2つの針が重なりキスをする。素敵だろ?」
「普通よ。何が素敵なの?」
「真夜中にはパリの恋人たちは愛しあってるんだ」

おいおいっていうくらいの口説き文句にも顔色一つ変えないニノチカ。
そのグレタ・ガルボの表情はこの世のものとは思えない美しさですが、ず~っと笑わなかった分、初めて笑った時のその笑顔の素晴らしさったらありません!

彼女が始めて笑うシーンの演出も傑作ですが、観てのお楽しみということで。

演出といえば、ホテルのドアだけを映し続けて、ウェイターやメイドが立ち替わり入っていって、それに反応する中の連中の声だけで表現するシーンには唸りました。

とてもへんてこりんな帽子を3回使ってニノチカが資本主義の魅力に惹かれたことを表す演出も絶品。

最初見た時は「あんな帽子を女にかぶせる文明は滅びるわ」
2度目に見た時は一瞥の元軽蔑します。

そして3度目。もう実は帽子を手に入れていて、誰もいなくなったのを部屋で鍵を閉めて、一人このへんてこな帽子をかぶって鏡を見つめるのです。

それにしても台詞が素晴らしいのがこの映画。
挙げ出したらキリがありませんが、いくつか印象的なものを。

やむなくソ連に戻ったニノチカにレオンからの手紙。
しかし、検閲ですべて塗りつぶされていて何が書いてあるかまったくわかりません。

悲しむニノチカにブリヤノフの一言。
「思い出までは検閲できない」

その時のことを後にニノチカとレオンが話す時のやりとりも素敵。

「何度手紙を書いても私の元に戻ってきた」
「届いても検閲されてた。読めるのは“愛するニノチカ”“君のレオン”だけ」
「中身が何だったかは時間をかけて証明するよ。だが一生かかってもすべてを伝えられるか」

あと、資本主義の魅力を理解したニノチカのこの台詞の見事なこと!

「変な感じね。国は雪が積もってるのに、あの鳥を見て。冬に資本主義国へツバメが飛び立つのが悔しかった。今ならわかる。私たちには高い理想が、彼らには温かい気候があるの」

台詞の素晴らしさは今まで自分が観た映画の中では最高。

徹底したソ連風刺映画ですが、政治的な面に傾くこともなく、次から次へと繰り出される粋な台詞の数々、ルビッチの唸るような演出、この世のものとは思えないグレタ・ガルボの美しさ、最後まで可笑しい3人組。

お弟子さんのビリー・ワイルダーが全然及ばないと言われているのもなるほどと納得。

これから何度観ることになるでしょう。ただただ素晴らしい、その一言です。

[原題]Ninotchka
1939/アメリカ/110分
[監督]エルンスト・ルビッチ
[脚本]ビリー・ワイルダー/チャールズ・ブラケット/ウォルター・ライシュ
[出演]グレタ・ガルボ/メルヴィン・ダグラス/アイナ・クレアー

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