クリント・イーストウッド監督作品第4弾、最新作『ミリオンダラー・ベイビー』観て来ました。
いろんなところで絶賛されている本作ですが、ここは率直に。
確かに“モ・クシュラ”の意味にはやられましたし、人によってはあそこらへんから号泣モード突入でしょうが、タイトルマッチでの“悪意のパンチ”のスローモーションで一気に冷めてしまいました。
大袈裟な演出をしないイーストウッドが、なんであんなわざとらしい演出をしたのかと…。
ただ、そこまでは、イーストウッド作品中でも最高峰の素晴らしさ。
前半、黙々とサンドバッグを叩くマギーに、見かねて声をかけるスクラップ。
彼女の思いについに折れたフランキー。
いつもながらに圧倒的な存在感のモーガン・フリーマン。
役者としてもまだまだやれるということを見せつけたイーストウッド。
心に空いた穴が少しずつ、少しずつ埋まっていくその過程を、わずかな表情とサンドバッグの響く音で演じきったヒラリー・スワンク。
3人の何気ないやりとりが死ぬほどよくて、ボロボロ泣いてました。
カウリスマキもそうですが、イーストウッドも、こういった何でもないシーンが抜群に素晴らしい。
タイトルマッチどころか、試合すらなくても、2時間延々とジムのシーンが続いても構わないくらい。
それほどに3人のやりとりは素晴らしい。
それでも、このことはやっぱり胸に響きましたね。
自分自身も、周りの人も、“悔いはない”、そう言い切れる人生。
70を過ぎても製作・監督・主演・音楽(素晴らしい!)の4役をこなすイーストウッドが凄いのはもちろんですが、本作はなんといってもヒラリー・スワンク。
イーストウッドとモーガン・フリーマン相手に一歩も引かない存在感、恐れ入りました。
最後に、イーストウッドのファンとしては、パンフレットに6ページに渡って付いていた「イーストウッド小辞典」が嬉しいプレゼントでした。
[原題]Million Dollar Baby
2004/アメリカ/133分
[監督]クリント・イーストウッド
[脚本]ポール・ハギス
[音楽]クリント・イーストウッド
[撮影]トム・スターン
[美術]ヘンリー・バムステッド
[編集]ジョエル・コックス
[出演]クリント・イーストウッド/ヒラリー・スワンク/モーガン・フリーマン
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