『ラヴソング』(ピーター・チャン)

ラヴソング

お互い事情を抱えて大陸から香港に出てきた男と女。
そんな2人の何気ない毎日を丁寧に綴った、素敵な恋の物語です。

それでも、最初から最後まで2人がずっと一緒というわけではなく、女は男を心から愛していながらも恩を受けたボスのことも捨てられず一時男のもとを去ります。
このボスがまたいい味だしています。どんな形で出てくるかは観てのお楽しみですが、ミッキーマウスにはやられました。

この単純ではない想いというのが、よくあるラブロマンスとは深みの違いを見せてくれます。
この彼女の“選択”がまた痛いほどよくわかるだけに、思わずう~ん…という感じです。

そして、効果的に挿入されるテレサ・テンの歌。
彼女の死を伝えるニュースが流れる中…。

展開的には予想がつく話ですが、そんなのあるわけないじゃないという偶然に終わらないのは、10年という歳月をほんとに丁寧に描いているからこそ。
会えそうで会えないあたりもよくあるパターンといえばそうですが、とても素敵に描かれています。

ラヴソング ピーター・チャン

主演の二人は、『天使の涙』ではクールな殺し屋だったレオン・ライが一転どこにでもいそうな普通の男に扮し、一方女優は、ウォン・カーウァイ作品の常連でもある香港のトップ女優マギー・チャン。
マギー・チャン相変わらず巧過ぎます!言葉少なに、表情だけで多くを語れる彼女ですが、今回も表情が抜群です。

この映画のもう一つの見所は、ウォン・カーウァイ作品の撮影監督として有名なクリストファー・ドイルが出演者のところに名が見えるように、役者として登場しているということ。
主人公の男が通う英会話教室の講師の役ですが、この講師というのが大の酔っ払いで、英会話の授業というのも海賊映画などを見せて、その台詞を覚えさせるというもの。
生徒が覚える言葉はどれも放送禁止用語、かなり笑えます。そして、なぜかかなりはまっています(笑)

メグ・ライアンなどのラブロマンスとはまた違った、大人の素敵なすれ違いの恋の物語。
すべての方に見て欲しいお薦めの1本です。

 

ラヴソング [DVD]

[原題]甜蜜蜜
1996/香港/118分
[監督]ピーター・チャン
[脚本]アイヴィ・ホー
[撮影]ジングル・マ
[出演]レオン・ライ/マギー・チャン/エリック・ツァン/クリストファー・ドイル

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