『ラスト・ショー』(ピーター・ボグダノヴィッチ)

ラスト・ショー

オープニング、朝鮮戦争が始まった頃のテキサスの田舎町。砂嵐舞う人気の無い町の往来。
台詞もナレーションもなくても、一発でこの映画の中に流れる空気に触れさせてくれます、見事の一言。

そんな町にあるオンボロ映画館でデートをする高校生たち。
ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、そしてシビル・シェパード。

“何もない”町で、ただ過ぎていく日々。
“何もない”感が痛いほど伝わってくる白黒の映像がたまりません。

それでも、上の3人たちの世代よりももっと魅せてくれるのは、ベン・ジョンソン、エレン・バースティン、クロリス・リーチマンたちの世代。

中でも、ベン・ジョンソンが愛の思い出をサニーに語るシーンがこの映画の白眉でしょう。
若かりし日のジョン・フォード西部劇での“動”の素晴らしさを知っているだけに、余計に心に響く“静”のベン・ジョンソン。

ちょっと他に思い当たらないくらい、“渋い”とはまさにこれ。熱いものが込み上げます。

エレン・バースティンが別の機会にサニーに語るくだりもたまりません。
共に、死ぬまで消えない、生涯ただ一度の夢のような日々。

ストーリー部分はいろいろ伏せておくことにして、久しぶりに映画館を訪れたサニーとデュエーン。映画館は今日で閉館とのこと。

“ラスト・ショー”は、よりにもよって、これぞテキサスというハワード・ホークスの『赤い河』。

ラスト・ショー 赤い河

映画史上に残るキャトル・ドライブの出発シーン。「イャーハーッ!!」と雄たけびを上げるカウボーイたち、テキサスがまだ栄光に包まれていた時代。

あの映画を観たことがある人間にとっては、このシーンは涙なしでは観れません。

誰からも愛された映画館主が亡くなり、恋は実らず、友は戦争へと旅立って行く。
それでも続くサニーの日々。

ラストはまたもや砂嵐吹き荒ぶ町の往来。
涙が出るほど美しく、あまりにも切ない。

サムがサニーに語ったように、サニーにもいつか次の世代に語りかける日が来るのでしょうか…。

 

ラスト・ショー [DVD]

[原題]The Last Picture Show
1971/アメリカ/118分
[監督]ピーター・ボグダノヴィッチ
[出演]ティモシー・ボトムズ/ジェフ・ブリッジス/シビル・シェパード/ベン・ジョンソン/エレン・バースティン/クロリス・リーチマン

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