今回は、リー・マーヴィン主演の『殺人者たち』です。
現金強奪事件、犯人同士のいざこざ、ファム・ファタール、雇われの殺し屋、消えた金の行方、これでもかというくらいハードボイルド全開な話ですが、原作はヘミングウェイの短編小説。
知らずにご覧になった方が絶対面白いと思いますので、話の筋を追うのはやめておきます。
話の筋を追う代わりに、思い浮かぶシーンを並べてみます。
自動車レースでの疾走、戯れるカサヴェテスとディキンソンを遠目に見つめるレーガンの眼差し、蒸し風呂での脅迫、一度冷たく閉めたドアを再び開け「悪かった」と友への詫び、その一言に救われた友、悪道での輸送車とのチェイス、リー・マーヴィンが突きつける銃口の凄み。
珍しくもない話がここまで面白いのは、ドン・シーゲル監督の演出の見事さももちろんのこと、なんといってもキャストの素晴らしさ。
殺し屋二人組のベテランの方にリー・マーヴィン、ファム・ファタールにアンジー・ディキンソン、彼女に翻弄される男にジョン・カサヴェテス(『特攻大作戦』でもリー・マーヴィンと共演してました)、犯人グループのリーダーに、後のアメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガン!
レーガン大統領は上手いとは思えませんが、今回は逆にそれが見事にはまっています。
ちなみに、この作品を最後に映画界からは引退したようです。
カサヴェテスは、『特攻大作戦』の“ダーティー・ダズン”のあの錚々たる顔ぶれの中でも存在感で一歩抜けていましたが、画面に映っているだけでオーラが違います。
監督としての彼の方が有名で(当ブログでも何本も感想を書いています)、役者は監督作の資金のためだと思いますが、役者としても一流。
アンジー・ディキンソンは、見るからに怪しい(笑)
カサヴェテスじゃなくても、近づいたらやばいというのはわかるわけですが、わかっちゃいるけどやめられない、それでこそファム・ファタール(笑)
そして、我らがリー・マーヴィン。
渋い、いかつい、恐い、はっきり言ってお近づきにはなりたくないタイプですが、むちゃくちゃかっこいい。
彼に耳元であんなことを囁かれたら、カサヴェテスの友人のメカニックじゃなくても、全て話さずにはいられません。
あと、一つだけ書いておきたいのは、映画の中のこととはいえ、カサヴェテスがレーガン大統領を殴り飛ばすシーンがあるんです。
これはかなり貴重なシーンではないでしょうか。
ラストシーンの突き放したような終わり方は、さすがドン・シーゲル、凡百の映画のような甘えが一切ありません。
リー・マーヴィンも迫真の演技。
95分と時間も短いですし、それこそ短編小説を読むような感じで、気楽にご覧になってみて下さい。
アンジー・ディキンソンに惑わされ、リー・マーヴィンに痺れ、ジョン・カサヴェテスに惚れます。
[原題]The Killers
1964/アメリカ/95分
[監督]ドン・シーゲル
[原作]アーネスト・ヘミングウェイ
[出演]リー・マーヴィン/ジョン・カサヴェテス/アンジー・ディキンソン/ロナルド・レーガン/シーモア・カッセル
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