『ヒーロー・ネバー・ダイ』(ジョニー・トー)

ヒーロー・ネバー・ダイ
今回は、『ザ・ミッション/非情の掟』へのコメントの中で、kie様にお勧めしていただいた、同じジョニー・トー監督作品『ヒーロー・ネバー・ダイ』です。

kie様ありがとうございます!

香港暗黒街で対立する二つの組織。
それぞれのボスは、自らの身を守り相手を消すため、お互いに凄腕の殺し屋を雇っていた…。

扮するのはレオン・ライとラウ・チンワン。

オープニング近くで両組織の銃撃戦があり、レオン・ライの活躍もありレオン側の勝利。

一息ついたレオンの額には、赤い照準の光が。狙っているのはラウ・チンワン。殺そうとすれば引き金を引くだけ。

一方、狙われていることがわかっていながら、何食わぬ顔で煙草をふかすレオン。

しかし、ラウは引き金を引きません。
この時点で、二人がただの敵同士でないことがわかります。

そして、いきなりこの映画で一番好きなシーン。
行きつけのバーで、テーブルに座り対峙する二人。
事を理解しているマスター、お互いの前にワイングラスを置きます。

ヒーロー・ネバー・ダイ ワイングラス

何が始まるのかと思いきや、コインを使ってワイングラスを割るという対決。
グラスの置き方が段々難しくなっていきながらも、絶妙なコインさばきで次々に割る二人。
その間一言も喋らないのがいい。

そこへ、同時に現れたお互いの彼女。二人の手にはそれぞれ極上のワイン。
どっちのワインが高級か、マスターに判定を迫る二人、負けたら殺すと殺気立っている二人に、判定を下せないマスター。

仲介を申し出たのはラウの彼女。
1本は二人の名前を書いてキープして、今夜は1本を開けましょう。

そうしてキープされることになった、二人の名前が書かれたワインボトル。
事あるごとに映され、映画の最後までポイントとなります。

ヒーロー・ネバー・ダイ ワインボトル

と長々と書いてしまいましたが、この“対決”のシーンはほんとにたまらなくて、“銃撃戦”の素晴らしさでは『ザ・ミッション/非情の掟』に劣るものの、このシーンのおかげで、負けず劣らずこの映画も大好きです。

ここからの展開はよくある話で、和解した両組織、不用となった二人に組織の手が迫る…というパターンです。

ただ、痺れる場面のオンパレードで、『ザ・ミッション/非情の掟』がひたすらクールだったのに対し、この映画は“泣き”の要素が大きいです。

セカチュウでもいま会いでも泣かなかった自分ですが、これは泣きました(笑)

組織のパーティーに乗り込んでいき銃弾に倒れたラウの彼女。

全身に火傷を負い「ここに残ってずっと夕焼けを見ていたい」と告げる彼女、そしてその後に映る一人去るレオン・ライの姿。

山小屋での銃撃戦にラウ・チンワンが演歌調の音楽をバックに登場するシーンなんて、笑っちゃうくらいかっこいい。

ヒーロー・ネバー・ダイ ラウ・チンワン

さらに、両足を失い復讐に燃えるラウが、ボスの暗殺を狙った際に、照準は合っていたものの標識の鉄柱に阻まれ、次の機会に鉄柱のわずか左に照準を合わせたまま動かなくなってしまった姿には泣きました…。

そして最後は、車椅子に乗せたラウを伴って、一人組織に乗り込んでいくレオン・ライ。

ヒーロー・ネバー・ダイ レオン・ライ

この銃撃戦は、“静と動の対比”の境地を極めた『ザ・ミッション/非情の掟』に比べれば、“派手すぎる”分だけ劣りますが、それでも飛び散るガラス片の美しいこと!

これを経て、そして辿り着いた境地が、『ザ・ミッション/非情の掟』のあの閉店間際でのジャスコでの銃撃戦だったのでしょう。

さらに、忘れてはいけないのが音楽。
『ザ・ミッション/非情の掟』ではあの安っぽいけどかっこよすぎるテーマ曲が耳から離れませんでしたが、この映画では、演歌調のメロディーが哀切を盛り上げ、さらに、日本人にはお馴染みの“スキヤキ”が、全編に渡ってテーマ曲として効いています。

この映画、全ての方にお勧めとはいかないかもしれませんが、まずは『ザ・ミッション/非情の掟』に痺れた方には断然お勧め。

また、『インファナル・アフェア 終極無間』でレオン・ライのクールな魅力にやられた方、ウォン・カーウァイの『天使の涙』の殺し屋役よりはるかにかっこいいですよ!

ジョニー・トー監督、これから他の作品を観るのがますます楽しみになりました。自分的には完全にツボです。

レオン・ライとラウ・チンワンの奇妙な絆、命を賭けて二人を愛した女性、そして“スキヤキ”の旋律。

レオン・ライ最後の突撃。
友よ、愛する人よ、今俺も行く…。

傑作。

(2005.7.17)

~2014.12.6追記~
こんなに枚数あるのに、雪ちゃんはいない…。 @ シネマート六本木 http://instagram.com/p/wP04b0ulEU/

ヒーロー・ネバー・ダイ シネマート六本木 写真

『ヒーロー・ネバー・ダイ』観ます。 @ シネマート六本木 http://instagram.com/p/wP0__qOlE9/

ヒーロー・ネバー・ダイ シネマート六本木

~2014.12.27追記~
『ヒーロー・ネバー・ダイ』HDリマスター版(2回目)観ます。 @ シネマスコーレ http://instagram.com/p/xGlZGcOlOe/

ヒーロー・ネバー・ダイ 日本版ポスター

【悲報】全然満席じゃない…。

オープニングでキープされたボトルが映った時点で安定の涙腺決壊w そりゃ泣くわ!

ジョニー・トー監督には伝家の宝刀がいくつかあって、その一つに“フォーメーションの天才”というのがあるけど、トーさんの手にかかれば、立ちションだってフォーメーションを組んでするのだ!でも、この立ちションのかっこよさは、やっぱりスクリーンで観てこそ映える。

雪ちゃんは実はNo.2で、ボスの手当てをとジャックに言われても、自分ではやらずに、お前やっとけと他の連中に軽く促すだけなのだ!雪ちゃん偉いぞ!でも、占い師のところで銃声が響いた時、真っ先に駆けつけたのも実は雪ちゃん、ちゃんと“できる男”として描かれてる。

ヒーロー・ネバー・ダイ ラム・シュー

「何か食べれるものを作れ」とカップラーメンを渡されて嬉しそうな雪ちゃん。頑張って作ったのに食べる前に銃撃戦が始まっちゃって、せっかくのラーメンも台無しに。でもそこからの切り替えが早い!この時点では『天使の眼、野獣の街』で見せたような食べ物への執念はないw

だから体型も今よりずっとすっきりしているのだ!“役に合わせて体型を変える”なんていうのは普通の名優のすること。さらに上をいく“食べ物への執念の度合いに合わせて体型を変える”、さすがは雪ちゃん、“デニーロ・アプローチ”の一歩先をいく徹底した役作り!

小学生レベルの悪口の言い合いの伝言を頼まれ続けたフェイが「もう勘弁してくれよ、直接会って話せよ」と言うと、その1秒後にはもう車が角を回って店の前に雪崩れ込んでくる、この編集のリズム!ファーストキスの5秒後に結婚していた『ジャージー・ボーイズ』より速い。

この“省略”は随所で効いていて、例えば有名なワイングラス割対決の前、二人が店に現れると同時に、もう他の客は一斉に逃げ出している。それは“何かヤバいことが始まる”のをみんなわかっているからで、“過去にあったヤバいこと”もこの数秒だけで同時に描ききっている。

こういう5秒もかけずに描けることを、数十秒、下手したら数分もかけて全部“説明”するから、最近の映画はほんとにどれも長過ぎる。逆に、“他の監督なら30秒もかけないところを少しも飽きさせずに10分も魅せる”のがセルジオ・レオーネだけど、あれは彼しかできない。

~2014.12.28追記~
『ヒーロー・ネバー・ダイ』HDリマスター版(3回目)観ます。 @ シネマスコーレ

ヒーロー・ネバー・ダイ シネマスコーレ

『ヒーロー・ネバー・ダイ』(@シネマスコーレ)は今日ももちろん最高!その後はたかやさんとサシ飲みでもちろん赤ワインも♪ グラスを割ることもなくしっかりと飲み干しました♪ 終わるまでにもう1回くらいはスクリーンで観たいなぁ。

昨日に続いて今日も劇場で鑑賞。もう驚異的な体感時間の短さであっという間。「スキヤキ」はもちろん、その他の音楽も、“感情を煽る”という意味ではちょっともう映画史上最高レベル。特に、ジャックがあの店に帰ってきた時の音楽との相乗効果は、鳥肌なんてものじゃない。

昨日書いた、ラーメンを台無しにされてからの雪ちゃんの切り替えの速さは、改めてじっくり観てみると、驚異的なレベル。食べ物への執着心がまったくない!近年の雪ちゃんではちょっと考えられない切り替えの速さw

 

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[原題]真心英雄
1998/香港/97分
[監督]ジョニー・トー
[脚本]ヤウ・ナイホイ/セット・カムイェン
[出演]レオン・ライ/ラウ・チンワン/ヨーヨー・モン/フィオナ・リョン/ラム・シュー/ユン・ブン/佐膝佳次/ロー・ウィンチョン
→予告編 →ワイングラス割り対決 →他の映画の感想も読む

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