『フル・モンティ』(ピーター・カッタネオ)

フル・モンティ

無職の男が男性ストリップ・ダンサーの人気に目をつけ、総勢6人からなる失業者たちのダンス・チームを結成したものの…。

“フル・モンティ”とは、素っ裸を指す俗語だそうです。
実際の撮影では、エキストラの観客達を前に、撮り直しなしの一発勝負で実際にすっぽんぽんになったとのこと。

とにかく笑いっぱなし!
でも、単純なコメディではなく、不況にあえぐ失業した労働者たちが主人公と、背景は暗いです。
この、悲哀とユーモアのバランスを撮らせたらイギリス映画にかなうものはありません。ハリウッドでは絶対に撮れない作品。

それにしても、登場人物みんながどうしようもなくダメな大人たち。このダメさ加減が最高です。

主演は大好きなロバート・カーライル。
『トレインスポッティング』で一躍有名になり、ハリウッド作品にも出るようになった彼ですが、冴えない男の悲哀を演じさせたら抜群に上手い!

このロバート・カーライル演じる親父と息子とのやりとりが泣かせてくれます。
奥さんに愛想を尽かされた典型的なダメ親父、でもそんなお父さんが大好きな息子、そんな息子だけが心のよりどころである親父。
単なるコメディに終わることなく、ここらへんの描き方はほんとに上手いです。

仲間たちもみんな魅力的。
中でも、太っちょの友達とその奥さんのコンビはいい味出しています。
結局は仲間に加わる上司も素敵。

お気に入りのシーンの一つは、ダンスの練習シーンで、列がなかなか揃わないところで、オフサイドトラップの要領だとなったらぴったり揃うシーンにニンマリ。

フル・モンティ

ラストのショーのシーンも、それまでのダメダメぶりが凄かっただけに、輝きは一層増していてほんとに爽快なシーン!
ほんの一瞬ながら、おそらく人生で初めて輝いたおやじたち、それでも彼らにこれから待っている現実を思う時、ただ手放しで喜べるラストでもありません。

そして、なんといってもこの映画で一番の傑作は、職安に並んでいた仲間たちが、たまたまかかったドナ・サマーの「ホット・スタッフ」に思わず揃って腰を動かしてしまうシーン。何度観ても爆笑です。
街で行列を見かけては、このシーンを思い出して吹き出した経験は数知れず…。

 

フル・モンティ [Blu-ray]

[原題]The Full Monty
1997/イギリス/93分
[監督]ピーター・カッタネオ
[出演]ロバート・カーライル/トム・ウィルキンソン/マーク・アディ

→予告編 →他の映画の感想も読む