『コンボイ』(サム・ペキンパー)

コンボイ

“アリゾナ、正午、6月7日、爆走する2台の車。
大型タンク車とジャガーがせり合う。
退屈しのぎにもってこい、さあ行くぜ。
ダックと渡り合うとは、いい度胸だぜ”

今でいうラップの走りみたいなものでしょうか。
こうやって文字だけ書くとたいしたことないんですが、C.W. McCallの「Convoy」をバックに無線調で語られるナレーション、オープニングからむちゃくちゃかっこいい。

というわけで今回は、サム・ペキンパー第4弾『コンボイ』です。

陽炎燃え立つハイウェイを、数百台の超大型トラックが爆走する、さすがサム・ペキンパー!な作品。

誰もが一目置くトラック野郎ラバー・ダック(クリス・クリストファーソン)。

旧知の悪徳保安官ライル(アーネスト・ボーグナイン)と一悶着起こした彼は、州境目指してトラックを走らせます。

そんなダックに、日頃から権力への不満を募らせていたトラック野郎たちが、どこからともなく集結。
初めは数台だったのに、あっという間に百台以上に膨れ上がるトラックの群れ。

砂煙を巻き上げ疾走するトラックの群れ、追うパトカー、これだけでもうたまりませんね。

コンボイ サム・ペキンパー

事は次第に大きくなり、マスコミが取材に来たり、選挙に利用するために知事までが駆けつけたりします。

しかし、彼らにはそんなのはどうでもいいこと。
走りたいから走る、気に食わない警官に一泡吹かせたい。
取材を受けた際に、仲間の一人が、ニクソンやロックフェラーへの不満も一応述べた後、こう言ってました。
「政治の話はともかく、この制限速度は許せねえ」
たまりませんねこの台詞(笑)

しかし、並の警官ならそんな彼らに太刀打ちできないでしょうが、何せこちらもアーネスト・ボーグナインです。
“ワイルドバンチ”の一員であり、『北国の帝王』でリー・マーヴィンとWBC世界ヘビー級選手権試合を闘った(一部間違ってます)、あのアーネスト・ボーグナインです。

奥さんの出産に立ち会うため群れから抜けた仲間の一人マイクを捕らえると、半殺しにしてダックを待ち構えます。

そんなマイクを助けに、みんなを残して、一人救出に向かうダック。

しかし、ダックがトラックを休ませていると、後から追ってきたトラックが、一台、また一台と、左右にピタリと止まります。

コンボイ サム・ペキンパー

ここでも例のナレーション。

“テキサスの夜明け、アルバレスに警笛が響く。
西部の街に、最後の鉄槌を下す。
悪名高きネズミ捕りの街を、ガレキの山に。
トラッカーの敵、ライルの最期は目前だ”

横一列に並ぶトラック。
このシーンのかっこよさは尋常ではありません。
かわぐちかいじの傑作漫画『沈黙の艦隊』で、海江田に呼応した各国の原潜が横並びに順に浮上した、あの『沈黙の艦隊』史上屈指の名場面に匹敵します。
というか、ひょっとしてかわぐちかいじ、このシーンからヒント得てないですかね。

またもや警官を蹴散らしたダックたちに、いよいよ軍隊が出動。
後ろの隊列はちょっとした事故を起こして遅れているため、1台で軍隊と対峙するダック。
助手席には、オープニングのジャガーの運転手であり、今や一緒に走ることになったメリッサ(アリ・マッグロー)。

ここに残るわというメリッサをトラックから追い出すと、機関銃が待ちかまえる中、フルスロットル、いざ突撃!!

この後は、観てのお楽しみ。

無線で話しながらトラックを走らせる男たち、それだけで十分かっこいい。
観終わった後の爽快感もたまりません。

乗っているのが馬からトラックに変わっただけで、香りはまさに西部劇。
確かに過去の傑作群には及びませんが、気楽に楽しめるサム・ペキンパー後期の痛快作。

 

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[原題]Convoy
1978/アメリカ/110分
[監督]サム・ペキンパー
[出演]クリス・クリストファーソン/アリ・マッグロー/アーネスト・ボーグナイン/バート・ヤング/シーモア・カッセル

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