『攝氏32度』(パトリック・レオン)

攝氏32度

ジョニー・トー製作、パトリック・レオン監督の『攝氏32度』観ました。
確かこれ、銀河映像の第1作ですよね。

これはちょっと凄い…。まだドキドキが収まりません。
途中からある程度予測がつくとはいえ、クライマックス凄すぎ!ある意味『デッドポイント~黒社会捜査線~』を超えてます。

主演はラウ・チンワンとン・シンリン。
ラウちんが殺し屋で巻き込まれるのがン・シンリンというならわかりますが、逆なところが凄い。
殺し屋がン・シンリンで、ラウちんは巻き込まれるただのラーメン屋のおやじ。

攝氏32度 ン・シンリン

本来なら接点があるはずもない二人が知り合いだんだん仲良くなっていくものの、この設定でハッピーエンドなわけもなく…(涙)

仕事を終える(人を殺す)度にラウちんのラーメンを食べに行くン・シンリン。
初めは、言葉を交わすこともありません。
それが、一言、二言。

ブランコに乗るン・シンリンの背中を押すラウちん。
雨水が溜まった坂道をゴムボートで一緒に滑り落ちる二人。
笑顔のない生活を送る彼女が、彼の前でだけ見せる心からの笑顔。

攝氏32度 ラウ・チンワン ン・シンリン

彼女がやって来るのを待っているラウちんが可愛い。
この可愛さは『恋する惑星』でトニーが店に来るのを待つフェイ・ウォンにだって負けてません。
嫌われたと思ったのに感謝の言葉を述べられた時の、嬉しさを爆発させるラウちんなんか最高ですね。

まあでも、幸せになるはずがないんですよね、ン・シンリンですし(笑)
これがサミーとからなら話はまた違ってくるでしょうが、アンディ×ン・シンリンを見てもわかるように、ン・シンリン主演という時点で一種のネタばれなわけで(爆)

ただ、二人の幸せな時間は、ラーメン屋のおやじをしてただのおやじから漢へと変貌を遂げさせ、クライマックスは『ヒーロー・ネバー・ダイ』もびっくりの怒涛の展開。

そこに絡む恋の切なさはもう振り切れていて、『デッドポイント~黒社会捜査線~』のラストの“余韻”が好きかこの振り切れちゃってるのが好きかは、好みの問題でしょうが、どっちも凄すぎなことには変わりありません。

あと、細かいところでは、『アクシデント』のルイス・クーはドアに葉っぱを挟んでおいて侵入者がいたかどうかを確認していましたが、彼以上にいつ殺されるかわからないン・シンリンの場合は、横になる時ドアの前に空き瓶を逆さまにして置いていました。
これなら、ドアが開けられたらすぐわかりますからね。

他では、喫茶店での一対一で、はめられて渡された銃に弾が入ってなかった時の、絶体絶命のピンチからの反撃ぶりもなるほどでした。
冒頭のスナイパーぶりといい、ン・シンリン、なかなか様になってましたね。

攝氏32度 ン・シンリン

あと、舞台が韓国に移る場面もあるので、途中は結構韓国語。
最近何かと話題の韓流ドラマか!?というようなシーンもありました。

振り切れちゃってる切ない恋と、これまた炸裂しまくりの銃撃戦。
普通の“恋愛も絡む軽いアクション映画”がお好きな方には間違ってもお薦めできませんが、『デッドポイント~黒社会捜査線~』のラウちんとヨーヨー・モンの不器用な恋って最高だよねというような方には、絶対の自信を持ってお薦めします。

必見。

 

BEYOND HYPOTHERMIA

[原題]攝氏32度
1996/香港/85分
[監督]パトリック・レオン
[製作]ジョニー・トー
[出演]ラウ・チンワン/ン・シンリン/ハン・ジェソク

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