先に進む方法は一つしかない。
しかし…。
『キングダム/見えざる敵』観てきました。
これ、どこまでマイケル・マンが携わっているんでしょうか。
やや期待外れだった『マイアミ・バイス』より、遙かに凄い。
画面揺らしすぎというのと、現地人からしか犠牲者が出ないご都合主義はあるものの、近年のアクション映画の中では最高峰でしょう。
オープニングの、サウジアラビアとアメリカの関係の歴史の説明、ここから秀逸。
かなり手短ですが、要点は押さえてあり、アメリカ政府内でFBI派遣が賛成されない理由や、いざ派遣された後も現地で思うように行動できない理由が、この説明のおかげですんなり入ってきます。
中東情勢に詳しい方には突っ込みどころもあるのかもしれませんが、一般的には必要十分でしょう。
銃撃戦やカーチェイスの凄みもマイケル・マン印。
中でも、敵アジトに着いてからの、どこから弾が飛んでくるかわからない恐怖感。
ライフルが止み、一息ついたかと思ったらロケット砲が飛んできますし。
役者では、今やマイケル・マン作品の顔になりつつあるジェイミー・フォックスも安心して観ていられますが、クリス・クーパーがいいですね。
エド・ハリスと並んで、映画の格を一段上げられる脇の名人。
現地に向かう飛行機の中でのジェイミー・フォックスとの会話なんかいいなぁ。
紅一点、全然見劣りしないジェニファー・ガーナーの面構えもいい。
がしかし。
アル・ガージー大佐を演じたアシュラフ・バルフム、彼が上手すぎ(笑)
ジェイミー・フォックスもクリス・クーパーも霞んじゃうくらい上手い。
そこらへんのアクション映画よりは公平に描かれているものの、FBI側に肩入れして観てきた観客が、一瞬にして現実に引き戻されるのがラスト。
FBI捜査官と、テロの首謀者が発した、全く同じ言葉。
それが片方は“テロリズム”となり、もう片方は“テロとの戦い”との名目の下“正義”とされる現実。
今やこの“正義”はとっくに揺らいでいますが、“テロとの戦い”という言葉が使われ続けているという現実。
憎しみからの復讐は新たな憎しみと復讐しか生まない、すでにいろんな映画でも語られてきている“憎しみの連鎖”。
そう簡単に断ち切ることができないからこそ、今も人類は殺し合いを続けているわけですが、そこから先に進む唯一の方法。
絵空事と言われようと、たった一つしか方法はないのです。
“赦す”ということ。
愛する女性を二人も殺されながら、それでも赦し、“力”を脱ぎ捨てたアンディ・ラウ。
2004年香港電影金像奨、ジョニー・トー監督作品『マッスルモンク』。
今、この時代にこそ、『マッスルモンク』に脚光を。
web-tonbori堂ブログ<久しぶりにいいアクション映画を観た。『キングダム/見えざる敵』雑感>
[原題]The Kingdom
2007/アメリカ/110分
[監督]ピーター・バーグ
[製作]マイケル・マン/スコット・ステューバー
[脚本]マシュー・マイケル・カーナハン
[音楽]ダニー・エルフマン
[出演]ジェイミー・フォックス/クリス・クーパー/ジェニファー・ガーナー/ジェイソン・ベイトマン/アシュラフ・バルフム/アリ・スリマン/ジェレミー・ピヴェン/ダニー・ヒューストン/リチャード・ジェンキンス/カイル・チャンドラー/フランシス・フィッシャー
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