押井守監督が「本物の恋愛映画を作りたい」と挑んだ『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』

スカイ・クロラ

確かパンフレットにも同じようなことが書いてあったような気がしますが、押井さん的には、真正面から恋愛映画として取り組んだみたいですね。

あの後原作5冊読みましたが、脚本化段階では『スカイ・クロラ』と『ナ・バ・テア』しか出ていなかったらしく、その状況で映画版のあの2時間にまとめたのは見事ですね。

原作そのまんまの台詞も多々ありますが、一番押井映画らしい草薙の長台詞が、原作では三ツ矢の台詞だったり、上手く“ずらしながら”やっています。

原作との決定的な違いは、映画では「君は生きろ、何かを変えられるまで」と草薙を生かした後で函南がティーチャーに挑んでいきますが、原作では、函南が草薙をそのまま殺してしまうところ。

そのパターンでも二人はまた出会うわけですが、栗田から続く“繰り返し”のことを考えたら、映画版の方がより切ないでしょう。

さらに、映画は、函南目線ですが、原作5冊のうち、実は函南の一人称なのはたった1冊です。
最初の2冊が草薙、3冊目が栗田、4冊目は最後の最後まで一人称は出てきません。5冊目でやっと函南の出番となります。

『スカイ・クロラ』と『ナ・バ・テア』だけの段階で映画化したのは正解だったかもしれませんね。相良あたりまで出てきてしまうと、とても2時間じゃ収まらないですし。
草薙vsティーチャーの一騎打ちは映像で観たかった気もしますが。

リンク先の記事ですが、行定監督が“押井映画における恋愛”を簡潔に言い表してますね。
「押井監督の作品は常に恋愛映画だと思う。男女の同志感というか、好き嫌いを超えて分かり合っている男女の距離を描いている。それが膨大な情報の中でまやかされてるけど、本質を表に出さないところが面白い」

公開時酷評しか耳にしなかったような気がする『春の雪』ですが、それを観て頼んだとあれば、観ないといけないなぁ。

@ぴあ<『スカイ・クロラ』の異色コラボは『春の雪』がきっかけだった>

 

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