今日の夕刊に、四方田犬彦氏の『コソヴォで観る黒澤明』という大変興味深いコラムが載っていたので、それについて一言。
四方田氏は昨年一年間、文化庁の文化交流使としてイスラエルと旧ユーゴスラビアで日本映画の連続講義をしたそうです。
コソヴォやベオグラードで、もっとも高い関心が寄せられていたのは黒澤明だったとのこと。
「僕は彼女が好きだけど、彼女は黒澤が好き」という歌詞を持ったポップスがヒットしたというのにはウケました。
現地の人々と四方田氏とのやりとりにニンマリ。
現地の人々は、事態があまりに錯綜していて誰の証言を信じていいやら判断がつかないという意味で「『羅生門』的」という言葉を使い、『七人の侍』は「コソヴォではいくらでも実際に起こりえた話」だというのです。
現地の教授ともなるとさらに凄くて、「どうしてコソヴォに出向いてアルバニア人の暴力からセルビア人の農民を守った将軍が、ハーグの国際司法裁判所で戦犯として裁かれなければならないのだ。彼は『七人の侍』で志村喬が演じた勘兵衛と同じことをしただけではないか」
黒澤明の映画を観ているだけでなく、会話の中にこのように出てくるのです。
日本人同士でも、このような会話が通じない相手の方が多いのではないでしょうか。
今さらながら“世界の黒澤”の偉大さを実感し、同じ日本人として大変誇りに思いました。
彼らは、遥か遠く離れた東方の島国に、旧ユーゴスラビアが生んだ傑作『アンダーグラウンド』に打ちのめされた人々が少なからずいることを、果たして知っているでしょうか…。
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