『いとこのビニー』(ジョナサン・リン)

いとこのビニー

今回は痛快法廷コメディ『いとこのビニー』です。

大学生のビルは、立ち寄ったコンビニで友人のスタンと共に強盗殺人犯と疑われ逮捕される。
ビルが弁護を依頼した弁護士はいとこのビニーだった…。

舞台は見るからに田舎のアラバマ。
そこへ、フィアンセのモナ・リサを伴ったビニーが、音楽を大音量で鳴らしながらおんぼろの車で登場。
場違いな二人に、街中の人々の視線は釘付け。

車から降り立ったビニーは、黒尽くめの皮ジャンにブーツ。
リサもそれに負けず劣らないド派手な格好。

二人の会話。

「お前 目立ちすぎるぜ」
「あんたこそ」
「お前よりは地味な格好してるぜ」
「そのようね」

この時点ですでに爆笑。
言い争うまでもなく、二人とも十二分に目立ってます(笑)

そして、ビルとスタンのいる房にビニー登場。
運悪くビルが寝ているところに現われたため、スタンはビニーが弁護士だとわかりません。
格好からしてその方が普通ですが(笑)

ビニーも囚人だと思い込んでいるスタン。
「さっさと終わらせよう」などと仕事の話を切り出したつもりのビニーですが、犯されると思い込んでいるスタンは必死に話を遮ります。

完全な“すれ違い”。
この“すれ違い”というのは、この映画全編に渡って一つのポイントです。

そして、ビルも起きてきて、いよいよ3人で打ち合わせ。
ビニーが“できる”弁護士だと思っている二人ですが、そこへビニーのこの一言。
「法廷に立つのは初めてだ 行ったこともない 幸運を」

思わず顔を見合わせる二人。
恐る恐る「いつから弁護士をやってるんだい?」
「6週間前」

しかも、6度目の司法試験でやっと受かったことが判明。
二人は唖然…。このやりとりもかなり笑えます。

朝食を食べるために廃れた店に入ったビニーとリサ。この場面が最高にウケました。
メニューを見て顔を見合わせる二人。
リサ「朝食?」、ビニー「そうする?そうだな、2つくれ」。

載っていたメニューはなんと「朝食 昼食 夕食」の3品だけ。

いとこのビニー メニュー

ここは文字通りお腹を抱えて笑いました。

このシーンで出てきた料理がアラバマ名物“グリッツ”。
この“グリッツ”は伏線となって後で効いてきます。

そしてビニーは“初めての”法廷へ。
相手の検事は、いかにも田舎で代々検事やってますという感じの男。

ビニーに向かって「ジム・トロッター3世、地方検事だ」と自己紹介。
そこでビニーはすかさず「ビンセント・ガンビーニ1世だ」
またまた爆笑です。

しかし、強がってはみたものの、何せ法廷に来たのが初めてのビニー、何一つわかりません。
そこで、検事が鞄を開けたり、机の下に鞄を置いたりする仕草をことごとく真似ます。
このあたりの一つ一つの仕草も最高に笑えます。
そして、罪状認否の仕方も知らないため、いきなり法廷侮辱罪でぶち込まれる始末…。

いとこのビニー ジョー・ペシ

後ですごく効いてくるのが、夜のホテルでの二人のやりとり。凄く印象的なシーンでもあります。
蛇口から漏れている水滴に、ビニーがリサにちゃんと閉めたのか?とつっかかります。
すかさずちゃんと閉めたと言い張るリサ。

絶対に閉めたと言い張るリサに、なんでそんなに言い切れるんだと突っ込むビニー。
すると、水道のマニュアルにはどれくらいの力で閉めればいいか数値が書いてあって、自分はプロ用トルクレンチで閉めたと。

なぜ手で閉めない?(笑)と突っ込みたいところですが、そこはまぁ流しましょう。

それでも、なぜそんなに正確?と食い下がるビニーに、そのトルクレンチは全米度量衡協会が少しの誤差もないと認めていると。
ここに至ってついに引き下がるビニー。

このシーンはほんとに爆笑ですが、後々大きな意味を持ってきます。
ちなみに、ジョー・ペシの「Are you sure?」の言い方がかなり笑えます。

何度も法廷侮辱罪でぶち込まれたり、相変わらず役立たずのビニーに、ビルはまだビニーのことを信じているものの、スタンは弁護士を代えます。この弁護士がまたまた凄いです。

その後もあれやこれやと色々ありますが、まったく駄目駄目だったものの、少しずつ“慣れてきた”ビニーが、いよいよ反撃に出ます。
その反撃の狼煙となったのが例の“グリッツ”、これは観てのお楽しみということで。

そして、証人の証言を一つずつ潰していきますが、ここらへんは、法廷物としてはお決まりの証言崩しで、内容的にはたいしたことありませんが、ビニーの喋り方でどれも最高。

このように一気に攻勢に出たビニーでしたが、検事側がもってきたとっておきの証人が、FBIの科学捜査班の指導員を18年やっているというプロ中のプロ。
その専門的な証言に、いよいよ打つ手なしかと思われたビニーだが…。

しかし、なんとビニーにもとっておきの証人が。
それがなんとリサ。

いとこのビニー マリサ・トメイ

ここからは観てのお楽しみということで伏せておきますが、マリサ・トメイの完全な独壇場。
全編に渡って素晴らしいマリサ・トメイですが、ラスト15分くらいはほんとに最高で、なんとアカデミー賞の助演女優賞ももらっています。

作品賞などには絶対に縁がなさそうなこの映画ですが、彼女の助演女優賞は観れば納得です。
それにしても、こういう映画でアカデミー賞の俳優部門をもらうなんて、ほんとに快挙だったことでしょう。
ハリウッドの懐の深さも感じさせます。
このラスト20分くらいは、ほんとに何度観ても飽きません。

単純に法廷物という意味では、これより優れた映画は何本もあるでしょうが、全編に渡ってとにかく笑え、ラストの法廷のシーンの痛快さはほんとに特筆もの。

何よりもジョー・ペシとマリサ・トメイ、いつまでも観ていたい最高のコンビです。

 

いとこのビニー [DVD]

[原題]My Cousin Vinny
1992/アメリカ/119分
[監督]ジョナサン・リン
[出演]ジョー・ペシ/マリサ・トメイ/ラルフ・マッチオ

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