久々に“皆様のお薦め映画”からです。
なかなか鑑賞が進んでいませんが、少しずつ観ておりますので、たまにリストをチェックしていただけると、気づいたら赤字(鑑賞済)になっているかもしれません。
さて、今回は、“泣けます。。。”(まだまだ募集中です!)へ投稿していただいた中から、にじばぶ様ご推薦、溝口健二監督作『祇園囃子』です。
にじばぶ様、ありがとうございます!
当ブログでは圧倒的に出番の少ない邦画ですが、黒澤や小津と並んで世界的な評価も高い溝口健二、恥ずかしながら観るのは『浪華悲歌』に続いてこれが2本目。
『浪華悲歌』は、山田五十鈴は圧巻ながら、映画としては正直好みではありませんでしたが、今回は違いました。
舞台は京都の花街・祇園。
役者陣も皆素晴らしいですが、一番の主役は祇園の街。
名手宮川一夫による、ため息の出るほど美しい、それでいてなんてことはない映像の数々。
何か凄い場面を凄く撮っているわけではありません、祇園の人々にとっては当たり前のように過ぎていく日々を、淡々と切り取っているだけ。
それでいながら、この美しさ。
宮川一夫の腕ももちろんながら、祇園そのものの魅力でしょう。
庶民なので、お座敷に立ち入ったことはありませんが、祇園の街は歩いたことがあります、まだ明るいうちでしたが。
京都は、大通りから少し中に入っただけで、まだこの映画のような光景が残っているのが凄いですよね。もちろんそのままではありませんが。
さて、主役は二人。
祇園ではちょっとは名の知れた芸妓美代春(木暮実千代)と、そんな彼女の世話になり、舞妓を目指すことになる栄子(若尾文子)。
いよいよ栄子の座敷デビューの日、彼女を見初めた大会社の御曹司が、美代春を前にして「姉ちゃんもう古いんだから、見習ったらずれちゃうよ」と栄子に一言。
笑って受け流す美代春ですが、内心穏やかではないでしょう。
このやりとりから、よくある新旧交代もので、栄子がトップに上り詰めていき、美代春が落ちぶれていく、そんな話かと思っていましたが、さすが溝口監督、そんな単純な話ではありませんでした。(かといって複雑ではないですが)
好きでもない男を旦那に取る、それが当たり前の美代春の世代と、言いたいことは言う栄子の世代。
好きでもない男に無理強いさせられたら、基本的人権の侵害で憲法違反で訴えるなんていう仰天する栄子の台詞がありますが(1953年の映画ですが、新憲法制定頃の設定なんでしょうね)、花街の伝統はしっかりと受け継がれながらも、時代は少しずつ流れています。
それでも、我を通した栄子の行為は許されることではなく、“おかあはん”の圧力(浪花千栄子凄い貫禄!)により、まったくお呼びがかからなくなる二人。
自分は長年この世界で生きてきた、酸いも甘いも知っている、でも、栄子の気持ちは大切にしてあげたい、しかし、理想だけでは生きてはいけない。
おかあはんに電話をかけ直す直前、鏡を前に無言で意を決する木暮実千代が圧巻。
そして…。
さて、真面目な話はこれくらいにして、ここからはおまけです。
初々しい若尾文子も可愛くていいですが、木暮実千代の大人の色気に1ラウンドTKO。
これでもかと見せつけるうなじに、伝家の宝刀、柳腰。
いやあ、完全に参りました(笑)
祇園の街並が素晴らしいと書きましたが、京言葉の美しい響きもいいですね。
昔、結婚するなら京都の人と、そんな憧れを抱いていた時期がありましたが、その思い再燃(爆)
1953/日本/85分
[監督]溝口健二
[撮影]宮川一夫
[出演]木暮実千代/若尾文子/河津清三郎/進藤英太郎/浪花千栄子