今回は、サム・ペキンパー第3弾『ガルシアの首』です。
メキシコの広大な荒野、広がる空、照りつける太陽、舞い上がる砂埃、まとわりつく汗、流れ出す血、そして、蝿のたかる生首。
こんな薄汚い世界が、どうしてこうも詩的なまでに美しいのか。
全ての始まりはこの一言だった。
「ガルシアの首を取ってこい」
メキシコの大地主の娘を妊娠させたガルシアという男の首に、100万ドルの懸賞金がかかる。
金の匂いをかぎつけた場末のバーのしがないピアノ弾きベニー(ウォーレン・オーツ)は、愛する女エリータ(イセラ・ベガ)と落ち着く金のため、後戻りのできない道へとその歩を進めていく。
よりにもよってガルシアはエリータの昔の男。
愛する女のかつての男の墓を暴き首を持ってくる、こんなみじめな話はない。
しかし、人生に破れたベニーにとって、これは最初で最後の大勝負、ただ墓から首を持ってくるだけだ、それだけで、今までに見たこともない大金が手に入る。
嫌がるエリータを連れ、ベニーはガルシアの墓を目指す。
ギターと、拳銃と、テキーラを携えて…。
道行く二人のやりとりがいい。
まるで新婚旅行にでも来たかのように、歌い、笑い、飲み、そして拙い言葉で愛を告げる。
「何より大切なのは、あなたと一緒にいることよ」
もう若くはない二人が、ようやく手にしかけた幸せのかけら。
大金が手に入ったら、どこか知らない土地へ行って、平穏な毎日を送ろう。
木にもたれかかって座る二人。
エリータの肩を抱き、「結婚しよう」
誰よりもこの言葉が似合わないウォーレン・オーツだからこそ、その重みが違う。
そして、ようやくたどり着いたガルシアの墓。
しかし、男が夢見た幸せは儚くも崩れさる。
ガルシアの首は奪われ、愛しのエリータも帰らぬ人に。
ついに失うものが何一つなくなった男の、怒りと意地の闘いが今幕を開ける…。
前半のラブストーリーともいえるのどかな展開から一転、ベニーはその身にみるみるうちに狂気をまとっていく。
蝿のたかるガルシアの首に語りかけるベニー。
愛するエリータはもういない。今は話し相手は首だけ。
首を奪った相手を葬り、依頼主も始末すると、“黒幕”の館にたった一人で乗り込んでいくベニー、その手にはガルシアの首。
ペキンパー監督十八番のスローモーションは冴えに冴え、荒野の道で、車を急停止させ砂煙が舞う時のスローモーションの、その美しいこと!
股間の毛じらみをテキーラで消毒する男ベニー、ようやくつかみかけた幸せを奪われた男の、引くに引けない魂の咆哮。
ウォーレン・オーツ一世一代の名演技による、サム・ペキンパー監督入魂の大傑作。
「俺が『ガルシアの首』を作った。良かろうが悪かろうが、気に入ろうが気に入るまいが、まさに自分のやりたいようにやった。あれは俺の映画だ」
~サム・ペキンパー~
[原題]Bring Me the Head of Alfredo Garcia
1974/アメリカ/112分
[監督]サム・ペキンパー
[出演]ウォーレン・オーツ/イセラ・ベガ/ロバート・ウェバー
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