今回は、ドン・シーゲル第3弾『突破口!』です。
いくらハリー・キャラハンが法を無視しているとはいえ、同じドン・シーゲルの『ダーティハリー』はあくまでも警官vs殺人鬼。
善vs悪の対決です。
ですが、この映画にいわゆる善はいません。
ニューメキシコの小さな銀行を襲った、夫婦と男二人の4人組。
大金など置いているはずのない小さな銀行だったが、奪った金はなんと75万ドルだった…。
話としてはよくある話で、実は金はマフィアの隠し金で、警察とマフィアの両方から追われるという話。
マッソーがロビンソンに言った「サツは甘いが組織はお前が死ぬまで追う」という一言が、警察とマフィアのことを一言で言い表していて印象的でした。
話としては目新しさはないものの(今ではそうですが、当時としては斬新なのかも)、キャストが魅力的。
オープニングの銀行強盗で男の一人が死に、その際負った傷が原因で間もなく妻も死にますが、残った二人のリーダー格にウォルター・マッソー。
トボけた笑いのコメディのイメージがありますが、そんなマッソーを犯罪者にもってきたのがキャスティングの勝利で、そのトボけた感じが、憎めない犯罪者役に見事にハマっています。
思わぬ大金が入っていても、飛び上がって喜ぶなんてこともありません。
若い相棒には、『ダーティハリー』の“さそり”ことアンディ・ロビンソン。
冷静なマッソーとは違い、こちらは思わぬ大金に大はしゃぎ。
短気で思慮のない彼に、まずは追っ手が忍び寄ることになります。
そんな二人から金を奪い返すため、マフィアが送った最強の殺し屋にジョー・ドン・ベイカー。
いかにも恐そうな見た目というわけではなく、見た目はむしろ甘いマスクなんですが、泣く子も黙る圧倒的な凄み。この殺し屋の存在感がとにかく強烈。
マッソーに偽造パスポート作りを頼まれた女性の扱いなんかも巧いなぁ。
自分に頼みにくるということは、もちろんヤバい事情があるということ。
どれだけふっかけてもマッソーとしては払うしかないわけで、事情も聞かずただぼったくります。
それでいて、嗅ぎつけて現れたベイカーに逆らう理由も何もないので、あっさりとマッソーのことを話してしまいます。
この“慣れた”感じがいい。
最大の見せ場はなんといっても、クライマックスのマッソーとベイカーの一騎打ち。
軽飛行機で受け渡し場所に現れたマッソーと、車で待ち伏せるベイカー。
軽飛行機vs車の、地上でのド迫力のチェイス。
このシーンを当時劇場で観れた方が羨ましい!
音楽は盟友ラロ・シフリン。
ドン・シーゲル、『ダーティハリー』に続いてこんな凄いのを撮ってしまうところが凄い。
派手さはありませんが、乾いた空気と演出の抜群のキレ。ハリウッドには、こういうアクション映画を作ってほしいなぁ。
イーストウッドの師匠ドン・シーゲル監督会心の、犯罪アクション映画の大傑作。
必見!
[原題]Charley Varrick
1973/アメリカ/111分
[監督]ドン・シーゲル
[音楽]ラロ・シフリン
[出演]ウォルター・マッソー/ジョー・ドン・ベイカー/フェリシア・ファー/アンディ・ロビンソン/シェリー・ノース/ノーマン・フェル
映画『突破口!』のポスターデザインを集めました。全部で8枚。 突破口! [Blu-ray] →他の映画のポスター集も見る [sitecard subtitle=関連記事 url= https://aisu[…]