『楽園の瑕』(ウォン・カーウァイ)

楽園の瑕

瑕はきずであって暇ではありません、念のため。
とにかく凄い!その一言です。はっきり言ってよくわかりません。
しかし、この映画に関しては細かいことは大した問題ではありません。

まずは俳優陣。
レスリー・チャン、レオン・カーファイ、トニー・レオン、ジャッキー・チュン、ブリジット・リン、チャーリー・ヤン、カリーナ・ラウ、マギー・チャン。

香港映画を少しでもご覧になったことがある方なら、これだけの名前が並ぶことがいかにとんでもないことかおわかりいただけるかと思います。
二度と揃うことはあり得ない夢の競演です。夢の競演という言葉でも足りません。

続いて、撮影は『欲望の翼』以来ウォン・カーウァイ作品の撮影監督を担当しているクリストファー・ドイル。
本人も、「この映画が自分の仕事の中で最も気に入っている」と語っているように、まさにベストの仕事をしています。

『恋する惑星』などでは都会を舞台におしゃれでかっこいい映像を披露している彼ですが、本作では大自然を舞台に、美しく繊細な、あまりの美しさに酔いさえする、ほんとに素晴らしい映像です。

楽園の瑕 クリストファー・ドイル

そして、この映画には、印象的な素敵な言葉がたくさん出てきます。

その代表が、過去を忘れる酒、その名も「酔生夢死」。酔いに生き夢に死す。
素敵な名前のお酒です。もしほんとにあったら一度飲んでみたいものです。

映画の中で飲んだ人物は、すべての過去を忘れることはできたが、一番忘れたい愛の思い出だけは消すことができなかった…。

また、ほんとうに愛する人と一緒にならなかった一人の女。彼女はこう語ります。
「勝ったと思っていたけど、ある日、鏡を見た時、そこに敗者がいた」

楽園の瑕 マギー・チャン

そうして彼女は息を引き取ります。愛する人にあるお酒を渡してくれと、頼んだ後に。
そのお酒こそ前述の「酔生夢死」。彼女は忘れてほしかったのです。
しかし、すべてを忘れた男も、彼女との愛の思い出だけは消し去ることはできなかった…。

極めつけはこの言葉。
「何かを忘れようとすればするほど、心に残るものだ。ある人曰く、何かを捨てなければならない時は、心に刻みつけよと」
決して忘れることのできない、いつまでも心に残る印象的な言葉です。

『恋する惑星』『天使の涙』などももちろん大好きです。『恋する惑星』については当ブログでも紹介しました。
しかし、ウォン・カーウァイ作品の中でもっとも強烈に印象に残っているのは間違いなく本作品。

ストーリーや理屈は大した問題ではありません。現在と過去の境界線さえも曖昧で時間の感覚さえ失われてきます。加えて揺れる映像は空間の感覚さえも奪っていく…。
このように、時間や空間を超え、ひたすらその世界に浸る、そんな映画です。

 

楽園の瑕 終極版 [Blu-ray]

[原題]東邪西毒
1994/香港/100分
[監督・脚本]ウォン・カーウァイ
[撮影]クリストファー・ドイル
[出演]レスリー・チャン/レオン・カーファイ/トニー・レオン/マギー・チャン/ジャッキー・チュン/ブリジット・リン/チャーリー・ヤン/カリーナ・ラウ

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