『タワーリング・インフェルノ』(ジョン・ギラーミン)

タワーリング・インフェルノ

『華麗なる賭け』に続いて2本目のスティーヴ・マックィーン出演作。
そして、今さら説明不要のパニック映画の金字塔。

サンフランシスコに138階建ての“グラス・タワー”が完成。
落成パーティーの最中に81階の倉庫から出火。
しかし、何も知らない出席者たちは、楽しい一時を過ごす…。

スティーヴ・マックィーン出演作と書きましたが、この映画の凄い点の一つはなんといっても超豪華出演陣。

スティーヴ・マックィーンとポール・ニューマンの共演というだけでも夢のようですが、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、O・J・シンプソンなどなど…。
それぞれが主役を張れる面々で、それぞれに見せ場が用意されています。

まずはこのビルの社長ウィリアム・ホールデンと、その義理の息子で工事を担当したリチャード・チェンバレン。
全観客を敵に回す役どころですが、二人ともその憎たらしさが最高。

火事もリチャード・チェンバレンの手抜き工事が原因の人災、しかも並みの手抜き工事ではなく、おいおいそんなのありかよという手抜き工事。仕様が違う部品を使い、スプリンクラーなどもまったく機能せず。

それでいて、ウィリアム・ホールデンは「最新の防災システムを全て備えたビルだ」「最新のこのビルなら延焼などしない」などなど、ぬけぬけと言い放つわけです。
こういうセリフ一つ一つが観ているこちらの心に火をつけ、彼らへの憎しみがませば増すほど主演の二人が引き立ちます。

完全な憎まれ役のリチャード・チェンバレンは、観客の胸をスッキリさせるべく、見事に散ってくれます。

三流の詐欺師フレッド・アステア。今回はその見事なダンスは披露されませんが、存在感は抜群。
彼とジェニファー・ジョーンズのロマンスが、この映画に彩りを与えています。
ラストのフレッド・アステアの姿には痺れます…。

さらに、不倫相手と逃げ場のないところに取り残され、助からないことを悟った時、「二人のことは永遠に秘密」という彼女の言葉に、助けを呼びに一人火の海に飛び込んでいったロバート・ワグナー…。

そして、もうひとつの主役である火事ですが、映画序盤ですでに出火しているにも関わらず、何も知らずにパーティーが行われているという、観ているこちらにだけわかる緊迫感がたまりません。

火事の現場で必死になっている人々がいる一方で、最上階のパーティー場では、モーリン・マクガヴァンの『愛のテーマ』が歌われていたりするわけです。
アカデミー主題歌賞も受賞したこの曲、最高に素敵です。

音楽は『ジョーズ』や『スター・ウォーズ』のあのジョン・ウィリアムズですが、オープニングのヘリコプターのシーンの音楽と、クライマックスの音楽はともにかっこよすぎます!

そして、序盤はポール・ニューマンが完全に主役ですが、物語も3分の1あたりを迎えたところで、消防隊長のスティーヴ・マックィーン登場。

タワーリング・インフェルノ スティーヴ・マックィーン

普通隊長は全体の指揮をとり自らは最前線には出向かないでしょうが、この隊長すべて一人でやってしまいます。
プロジェクトXで放送されたホテル・ニュージャパンの火災の時の消防士の話でも、隊長自ら飛び込んでいったわけですが、スティーヴ・マックィーンはその上をいっています。
あの活躍なら部下はいらないでしょう。

それにしても、スティーヴ・マックィーンかっこよすぎ!
あのポール・ニューマンの存在感を薄れさせてしまうほど、その存在感は他を寄せつけません。

そして、彼は多くを語りません。黙々と、言葉ではなく行動で語る男。
その分、ぽつりと語られる一言がどれも痺れます。

ラスト近く、一か八かの手段に出る時、「爆薬をどう運ぶ?」と尋ねるポール・ニューマンに対し、「バカな消防士が運ぶよ」。くぅ~、痺れます…。
他にも「このビルだけは燃えないと思っていた」等々。

それでも、やっぱりポール・ニューマンとのこのやりとりでしょう。
「俺は火と戦い、死体運びさ、安全なビルの建て方を聞かれるまで」
「それじゃ、教えを請うよ」
「今度、電話しろ。またな、設計屋」

タワーリング・インフェルノ スティーヴ・マックィーン ポール・ニューマン

ラストの爆破シーンはまさに圧巻!
爆弾のタイマーが時を刻む中、柱などに体を縛りその時を待つ人々。
その表情を順にとらえるシーンの緊張感は凄まじいものがあります。

そして、貿易センタービルのあの惨事を思う時、スティーヴ・マックィーンの「今にこんなビルで1万人の死者が出るぞ」の台詞は、30年前にすでに超高層ビルの惨事を警告していて、ゾクリとさせられます。

普通に考えればあんな高いビルで火事などが起きた時、全員が無事逃げられるわけもなく、この映画が発した警告は、今もなお克服されていないということでしょう。

貿易センタービルの惨事の時にも、ビルの中ではこのようなパニックが起きていたのかと思うと、胸が締め付けられます。
そして、あの時一躍ヒーローになった消防士ですが、改めて頭が下がります…。

最後にちょっとしたエピソードを一つ。
冒頭に出てくるクレジットですが、共にスーパースターのスティーヴ・マックィーンとポール・ニューマン。
クレジットの順番をどちらを先にするかでスタッフは相当悩んだとのこと。

クレジットは名前が先に出てくる方が主演であり、複数の名前を同時に出す場合は、左(上)から右(下)と序列が決まっていて、二人同時に出すことはすぐに決まったものの、どちらを左にするかで揉め、苦肉の策として用いられたのが、左マックィーン右ニューマンとしながら、右側のニューマンをマックィーンよりも上にするというもの。
確かに、よく見るとそうなっています。

それぐらい揉めるほど、めったに拝めないスーパースター同士の夢の共演。
さらに豪華共演陣と最高の音楽とくれば、これを見逃す手はありません!

(2004.9.25)

2013.8.18 「新・午前十時の映画祭」で鑑賞
「爆薬をどう運ぶ?」「バカな消防士が運ぶよ」。このやりとりを映画館で聞ける日が来るとは!!!涙がちょちょぎれた。

 

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[原題]The Towering Inferno
1974/アメリカ/165分
[監督]ジョン・ギラーミン
[製作]アーウィン・アレン
[脚本]スターリング・シリファント
[音楽]ジョン・ウィリアムズ
[主題歌]モーリン・マクガヴァン
[出演]スティーヴ・マックィーン/ポール・ニューマン/ウィリアム・ホールデン/フェイ・ダナウェイ/フレッド・アステア/スーザン・ブレイクリー/リチャード・チェンバレン/ジェニファー・ジョーンズ/O・J・シンプソン/ロバート・ヴォーン/ロバート・ワグナー

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