『ジャッカルの日』(フレッド・ジンネマン)

ジャッカルの日

繰り返し観ている映画ですが、映画館では初。
派手なことは何一つ起きないのに、142分緊張の糸が一切途切れることなく、今回も痺れまくり。

この映画が素晴らしいのは、殺し屋が超一流なだけでなく、警察側の地道で的確な捜査も超一流だということ。
超一流vs超一流。

「誰が一番優秀な警察官だ?」と問われ、警視総監は一人の警視の名前を挙げる。
聞いた方も細かいことなんて聞かない、彼が一番と言うなら一番なんだろう、この信頼感。
そしていったんその男に任せたら、ちゃんと全権を委ねる。

ジャッカルの日 ミシェル・ロンズデール

こういう細かいやり取り一つからしてもうたまらない。

この警視、誰よりも頭が切れ、的確な指示を出しながら総指揮を取るだけでなく、時にはヘリに乗り込んで最前線にも駆けつける。
部下を信頼していないわけではない、でも、肝心な時にはちゃんと自分がその場に足を運ぶ。
最終的にも、直接殺し屋と顔を合わせることになります。

殺し屋と周りの人間たちとのやりとりもいい。
銃の改造屋、身分証明書やパスポートの偽造のプロ、それぞれがそれぞれのベストの仕事をこなす。
ただ、「それ以上」を望んだ者に命の保証はありません。

改造銃の設計図を見た改造屋の「シンプルで素晴らしい」というプロ同士の会話がたまらない!
改造屋も設計図を見て絶賛した、この特注の狙撃銃が何よりも素晴らしい。

専門的なことはわかりませんが、まさにシンプルイズベスト。
時にはアルファロメオのマフラーの中に隠し、時には松葉杖の中にも隠せる、最小限のパーツによる、組立式の銃。
このビジュアルがかっこよすぎる。

そして、この映画のハイライトの一つ、試し撃ちのシーン。

ジャッカルの日 エドワード・フォックス

一発撃った後、微妙にずれたので、ネジを調節します。
それでもずれたので、さらにもう1回調節。
『ジャガーノート』にもネジを半分緩めるというのがありましたが、ネジにこだわる映画は間違いない!

そして、砕け散る西瓜!

さらに、契約の時に、立ち会った3人のうち一人でも逮捕されたら中止するからなと告げていたのに、それどころか自らのコードネームや顔まで警察にバレているのがわかっても、それでも最後までやり遂げようとする殺し屋。
フランスとイタリアの分かれ道、ハンドルを左に切るあの瞬間!

ジャッカルの日 フランスとイタリアの分かれ道

いかん、このまま書いてたら全部書いちゃいそうだ(笑)

あっ、最後に一つだけ。

銃の改造屋との会話で「2発目はたぶん撃てないだろう」というやりとりがありましたが、それがちゃんと最後に効いてくるのも痺れましたねぇ。

一番最初に書いたように、自分も超一流なら、追ってくる方も超一流。
だからこそ、チャンスはたった一度だけ。

大傑作。

 

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[原題]The Day of the Jackal
1973/アメリカ/142分
[監督]フレッド・ジンネマン
[原作]フレデリック・フォーサイス
[出演]エドワード・フォックス/ミシェル・ロンズデール/アラン・バデル/トニー・ブリットン/シリル・キューザック/エリック・ポーター/オルガ・ジョルジュ=ピコ/デルフィーヌ・セイリグ/アンドレア・フェレオル/ミシェル・オークレール

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