『越境』(フローラ・ラウ)

越境

お洒落な台詞やナレーションとクリストファー・ドイルによる“映画の中に流れる空気”で語るのがウォン・カーウァイの映画だけど、そこから“説明”を全部省いた感じ。

言わなくてもわかる、映さなくてもわかることは見事に省略している演出力、これが監督デビュー作なんてとても信じられない。

越境 カリーナ・ラウ チェン・クン

登場しただけで貫禄が違いすぎるオーラ、奥様方の集まりでの気まずい空気とせめてもの反撃、風水に頼ったちょっと笑えるけど実は笑えない部屋の模様替え、カジノで誘われた時の視線の外し方、ついにこらえきれなくなる瞬間。

熱演することだけが名演技じゃない、静かなるカリーナ・ラウが圧巻。

越境 カリーナ・ラウ

たった三言、「大丈夫ですか、大丈夫です、何とかなります」、それは、自らへかける言葉でもある。

その言葉にわずかな力をもらった人間は、黙ってただドアを開ける、言葉はいらない。

そして、初めて“自らの足で”歩き始めた人間の後ろ姿をゆっくりと映しながら、映画は静かに幕を閉じる。

傑作。

 

過界 (2013) (Blu-ray) (香港版)

[原題]過界
2013/香港/95分
[監督]フローラ・ラウ
[撮影]クリストファー・ドイル
[出演]カリーナ・ラウ/チェン・クン/ステファニー・チェー

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