![越境](https://aisubekieigatachi.com/wp-content/uploads/2021/05/20141120092202524.jpg)
お洒落な台詞やナレーションとクリストファー・ドイルによる“映画の中に流れる空気”で語るのがウォン・カーウァイの映画だけど、そこから“説明”を全部省いた感じ。
言わなくてもわかる、映さなくてもわかることは見事に省略している演出力、これが監督デビュー作なんてとても信じられない。
![越境 カリーナ・ラウ チェン・クン](https://aisubekieigatachi.com/wp-content/uploads/2021/05/201506022008083d6.jpg)
登場しただけで貫禄が違いすぎるオーラ、奥様方の集まりでの気まずい空気とせめてもの反撃、風水に頼ったちょっと笑えるけど実は笑えない部屋の模様替え、カジノで誘われた時の視線の外し方、ついにこらえきれなくなる瞬間。
熱演することだけが名演技じゃない、静かなるカリーナ・ラウが圧巻。
![越境 カリーナ・ラウ](https://aisubekieigatachi.com/wp-content/uploads/2021/05/201506022008115d7.jpg)
たった三言、「大丈夫ですか、大丈夫です、何とかなります」、それは、自らへかける言葉でもある。
その言葉にわずかな力をもらった人間は、黙ってただドアを開ける、言葉はいらない。
そして、初めて“自らの足で”歩き始めた人間の後ろ姿をゆっくりと映しながら、映画は静かに幕を閉じる。
傑作。