『欲望の翼』(ウォン・カーウァイ)

欲望の翼 欲望の翼

『恋する惑星』『楽園の瑕』に続いて3本目のウォン・カーウァイ監督作品。

今回も『楽園の瑕』同様メンバーが超豪華。
今は亡きレスリー・チャンを筆頭に、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、さらに台詞はゼロながらインパクトありすぎのトニー・レオン。

この映画は、有名な“脚のない鳥”のエピソードや、カリーナ・ラウとジャッキー・チュンのやりとり、アンディ・ラウとマギー・チャンのやりとりなど、他にも素敵なシーンはいくつもありますが、他のことを書いて薄れてしまわないように、あえて一つだけ書きます。

冒頭のヨディとスーのやりとり。
まだ友達ですらなかった二人の会話。

「時計を見ろ」
「どうして?」
「1分でいい」

ヨディの腕時計を黙って見つめる二人。

「1分経ったわ」
「何日だ」
「16日」
「1960年4月16日3時1分前、君は俺といた。この1分を忘れない」

物語も終盤、息も絶え絶えのヨディは、「覚えてるか?去年の4月16日の3時に何をしてたか」の問いに、一言こう答えます。

「あの女といた。肝心な事は忘れない」

欲望の翼

「一番愛した女が誰なのか分からない」と、スーともミミとも他の誰とも安住の地を求めず、彼の語る“脚のない鳥”そのままに、ひたすら飛び続けたヨディ。

きっとスーのことを今も昔も愛してなどいないでしょう。
それでも、あの1分が彼の心から消え去ることはなかったのです。

片やヨディに捨てられたスー、「彼を忘れるには、あの最初の1分から過ぎた時を全部忘れないと」
彼女の心からもまた、あの1分が消え去ることはありませんでした。

もう二度と会うことはない男と女の心に刻み込まれた、1960年4月16日3時前の永遠の1分。

永遠の1分、1分という永遠。

 

欲望の翼 4Kレストア UHD+Blu-ray [Blu-ray]

[原題]阿飛正傅
1990/香港/97分
[監督・脚本]ウォン・カーウァイ
[撮影]クリストファー・ドイル
[美術]ウィリアム・チャン
[出演]レスリー・チャン/カリーナ・ラウ/アンディ・ラウ/マギー・チャン/ジャッキー・チュン/トニー・レオン

→予告編 →他の映画の感想も読む

関連記事

鑑賞23本 感想9本 関連記事15本 NEW! 『若き仕立屋の恋 Long Version』 ●モリコーネ 映画が恋した音楽家(Ennio)出演(2021) ●グランド・マスター(一代宗師)監督/脚本/原案/製作(2013) […]