『情婦』(ビリー・ワイルダー)

情婦

今回は、前回の『いとこのビニー』から法廷ものつながりで『情婦』です。

邦題で損している映画の典型で、原題は『Witness for the Prosecution』。
これをそのまま『検察側の証人』と訳したのでは堅過ぎると思ったんでしょうが、もし『情婦』という名前にひっかかってご覧になってない方がいるとしたら、ほんとにもったいないと思います。

さて、法廷ものといえば一番有名なのはシドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』で(といっても陪審員が協議する部屋だけで、いわゆる法廷は出てきませんが)、あの映画も文句なしの傑作ですが、本作はその上に大がつく大傑作!これと比べてしまったら、最近のジョン・グリシャム原作作品など大人と子供です。

そして、映画史上最高のどんでん返しと言われることもある本作品、その言葉は決して大げさではありません。

情婦 マレーネ・ディートリッヒ

とさっきからうだうだと書いているわりには何一つ内容について書いていませんが、それは『悪魔のような女』の時と同じで、予備知識ゼロで観て頂きたいためです。
『悪魔のような女』のラストも衝撃的でしたが、今回はそのさらに上をいきます。

本筋に関係ないところで少しだけ書いておくと、真面目な話でも決してそれだけでは終わらせないのがビリー・ワイルダーで、そのポイントは絶品の話術にあるわけですが、本作でもその話術の妙は最高潮で、法廷のシーンももちろんながら、全編に渡って繰り広げられる弁護士と看護婦とのやりとりが最高に笑えます。
あと、階段を上り下りするリフトにも爆笑です。

情婦 リフト

原作アガサ・クリスティに監督ビリー・ワイルダー、この時点で外れはありませんが、法廷ものの最高傑作という域を超え、法廷ものというジャンルをとっぱらって、サスペンス・ミステリーという枠で見ても、最高傑作の中の1本ではないでしょうか。

あの双葉十三郎氏をして、“これほどアッといわせた映画はヒッチコックにも例がない”とまで言わしめたこの作品、まだご覧になっていない方は、騙されたと思って観てみてください、今回に限っては外れはないと思います。

法廷物が好きな方には間違いなく、ミステリー映画好きの方にも自信をもって、というよりすべての方に自信をもってお勧めできる、正真正銘の大傑作です!

 

情婦 [DVD]

[原題]Witness for the Prosecution
1957/アメリカ/117分
[監督・脚本]ビリー・ワイルダー
[原作]アガサ・クリスティ
[出演]タイロン・パワー/マレーネ・ディートリッヒ/チャールズ・ロートン/エルザ・ランチェスター

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