前回の『ガントレット』に続き、クリント・イーストウッド作品。
『キル・ビル』の時に少し引用した『ホワイトハンター ブラックハート』です。
この映画、ジョン・ヒューストン監督の『アフリカの女王』のアフリカロケに同伴した脚本家ピーター・ヴィアテルの同名小説の映画化です。
というわけで、もちろん『アフリカの女王』を観ていなくても十分に楽しめますが、観ているとより楽しめると思います。
ジョン・ヒューストン(この映画ではジョン・ウィルソン)が主人公ですが、所々イーストウッド自身のメッセージそのものというようなシーンも出てきて、ファンとしてはニンマリさせられます。
出発前の親友の脚本家とのやりとりでは、映画を作る時は観客やハリウッドのお偉いさんのことを考えてちゃだめだ、俺はアカデミー賞の特別賞をもらってアカデミー賞(作品賞や監督賞)をもらうような連中を天国から笑ってやるんだ、みたいな台詞がありますが、これなんてイーストウッドそのものでしょう。
今やアカデミー賞ダブル受賞2回の“巨匠”ですが。
さてヒューストン、アフリカにやってきたのはいいものの、アフリカ象に魅せられ、自らの手で射止めることで頭がいっぱいになります。
キャサリン・ヘップバーンやハンフリー・ボガートが到着しても、さらには見かねてプロデューサーまでもが乗り込んで来ても、アフリカ象を射止めるまでは撮影には入らんと、聞く耳を持ちません。
突然雨季に入り他のみんなは撮影ができなくてイライラしているのに、撮影ができないから狩りに集中できると喜んで狩りに出掛ける有様。
それでも、みんなの必死の説得に、ようやく撮影開始の体勢に。
ところが、全ての準備が整っていざ撮影開始という時、心通わせた現地の案内人から象の群を見つけたとの連絡が入ると、またもや出掛けてしまいます。
あきれかえる出演者やクルーたち。
この案内人に限らず、現地の人々とは心通わせているヒューストン。
そして、待ちに待ったアフリカ象との対峙の時。
銃を向けるヒューストン、厳然と立ちはだかるアフリカ象。
結局最後の最後まで引き金を引けなかったヒューストン、銃を下ろした時のイーストウッドの表情は必見です。
立ち去ろうとするヒューストン。
突然襲いかかるアフリカ象。
自らを犠牲にしてヒューストンを救ったのは、心通わせたあの案内人でした。
打ちひしがれるジョン・ヒューストン。
皆が待つ撮影現場に、死人のような顔つきで戻ってきます。
異変に気づき騒ぎ始める現地の人々。
人々は、事態を知らせるため、太鼓を叩き始めます。
「あのドラムは?なんと言ってる?」と尋ねるヒューストンに、「皆に知らせてる、悪い知らせを。始めは いつも同じ」との答え。
「何と?」と再び尋ねるヒューストンにこの答え。
「White hunter, Black heart」
この言葉のなんと強烈なこと!一言で全て言い表しています。
しかし、さらなる一撃が。
打ちひしがれ、憔悴しきったヒューストン、彼の本来の“居場所”ディレクターズチェアに崩れ落ちるように腰を下ろします。
そんな彼を見つめる出演者やクルーを次々と捉えるカメラ、そしてヒューストンは、絞り出すように、ほんとに絞り出すように、ある言葉を発します。
これには鳥肌が立ちました。
ジョン・ヒューストンの、そしてクリント・イーストウッドの、映画への想いに打ちのめされる名作。
[原題]White Hunter Black Heart
1990/アメリカ/112分
[監督]クリント・イーストウッド
[撮影]ジャック・N・グリーン
[音楽]レニー・ニーハウス
[出演]クリント・イーストウッド/ジェフ・フェイヒー/ジョージ・ズンザ
今回は、以前の日記で少し触れたタランティーノ作品から、彼が自分の好きなものをとにかく詰め込んでみました的な『キル・ビル』です。 今まで他の映画にまじめにコメントしてたのは何だったんだというくらい、とにかくハチャメチャです。 冒頭に、[…]