「気持ちは分かるが、あいつのことは諦めろ」
「望みナシ?それでもいい。諦めるのは慣れてる。それに少なくとも、好きになって後悔するような男じゃない。1人を愛し続ける男がこの世に何人いる?」
天国のパパ以外に心を許せる相手がいなかった孤独な少女が、大切な人と、大切な仲間と、最強の敵に挑んでいく。
というわけで今回は、ジージャー主演『Raging Phoenix』が邦題『チョコレート・ソルジャー RAGING PHOENIX』でDVDスルーというエントリーでも以前取り上げた、ジージャー主演『チョコレート・ソルジャー』です。
この映画、一言で言うなら、『導火線』に近い。
どういう意味かというと、『導火線』も、ラスト30分までは全然たいしたことないのに、ラスト30分のアクションがとにかく凄まじかった。
特に、ドニーさんvsコリン・チョウ戦は、映画のレベルにあっては、世界最高峰の一戦でした。
それと同じく、この映画も、ラスト30分くらいまでは、そうたいしたことありません。
定番の特訓シーン(音楽が素晴らしい!)や、仲間の一人との戦い、敵のアジトに乗り込んでの戦いと、見せ場はそれなりにありますが、『チョコレート・ファイター』を観ている今となっては、ジージャーならこれくらいできて当たり前ですし、凄いことは凄いですが、想像の範囲内です。
それが、ラスボス戦がとにかく凄い。
この手の映画というのは、コリン・チョウの存在がそうだったように、主役と互角以上に戦える相手がいないと素晴らしい映画にはなりませんが、このラスボス、ジージャーと、彼女に泥酔拳を教えてくれた師匠(演じるカズ・パトリック・タンはTRICKZ Martial Artsのチャンピオン)の二人がかりでも、互角どころか、むしろ優勢。
しかも、ジージャーと同じく女性です。ボディビルのアジア太平洋チャンピオンとのことで、凄い肉体。
この映画の中で、ジージャーは3段階強くなります。
1段階目は、普通の少女が、泥酔拳を教わった段階。これだけでも十分強いですが、それだけでは何かが足りなかったところへ、一度目の覚醒。
その時、戦った相手と、こんなやりとりがありました。
「泥酔拳の基本は?」
「酔うこと?」
「“痛み”だ。酔うのは痛みを力に変えるための手段。痛みが増すほど、酔いも増す。それこそが泥酔拳の真髄だ」
「じゃ、つまり…」
「幸せな人間は、泥酔拳の使い手になれない。お前も、つらい人生を送ってるようだな」
痛みが、悲しみが、極限まで増したその時、脳裏によぎるあの言葉。
「泥酔拳の基本は“痛み”だ。痛みが増すほど、酔いも増す。それこそが泥酔拳の真髄だ」
そして、最後の覚醒。
以下、ネタバレ全開。ただし、『導火線』の時と同じく、ストーリーのネタバレではなく、アクションのネタバレです(笑)
まずは、手下二人(かなり強い)が相手。
いきなりの大技炸裂で、捻った手首をつかんだ状態からのオーバーヘッドキック、起き上がり際の相手の頭への旋風脚。
二人目には、バク宙からそのまま脳天への膝。
両方とも十分フィニッシュになり得る大技ですが、それでも立ち上がってくる手下も素晴らしい。
そして、ラスボスとの再戦。
ジージャーは最後の覚醒を果たしていますが、それでもまだ互角。ラスボスはこれくらいの強さがないと!
ジージャーが先手を取りますが、そこで飛び出たのが、前方に飛び込みながらの蹴り。これが強烈、しかも、美しい!
ジージャーもすぐに強烈なあびせ蹴りでやり返し、その後の打撃戦、組み手でもややジージャー優勢。
ここで、気合を入れなおした敵が繰り出したのが、バックドロップの態勢から一回転させてうつ伏せに落とすというなかなかデンジャラスな技。下はコンクリートです(笑)
さらに、この後が素晴らしく、立ち上がろうとするジージャーに対し、立ち上がり際に蹴り飛ばし立ち上がらせません。
立ち上がろとするジージャー、蹴飛ばして立ち上がらせない敵、繰り返すこと6回、このしつこさが素晴らしい。
台詞なんて一切なくても、このアクションのしつこさが、敵のキャラを見事に浮かび上がらせます。
そして7回目、ようやくなんとか立ち上がったジージャー、今度も蹴り飛ばそうとする相手の足を掴むと、またもや大技炸裂!
相手の蹴りを左脇で抱え込むと、そのまま体を捻りながら飛び上がり、空中での後ろ回し浴びせ蹴り。すげー!
このように、相手に掴まれながらとか、自分から掴みながらの、態勢が崩れた中での空中での蹴りがほんとに素晴らしい。
右後ろ回し蹴りを掴まれながらの、相手の右ミドルを空中で左足でブロックしながらそのまま止まらずにその足での左ハイなんて、もはや芸術の域。
それでもまだまだ敵も動けますが、そこからさらに、スコーピオンキックからの顔面ウォッシュという容赦ない繋ぎから、空中での膝蹴り合戦でも勝利。
これはさすがに結構効いていますが、それでも立ち上がってくる相手を仰向けに倒すと、『導火線』の三男タイガー戦で周囲をドン引きさせたドニーさんもびっくりの、そこまでやりますかというえげつないフィニッシュへ。
うつ伏せで倒れている相手の首の付け根あたりに肘を7発叩きこむと、首を掴んでの腹部への膝蹴り16発。
もうこれで完全に勝負はついているんですが、そこへさらに、陸奥圓明流“四門”の1つとして出てきてもおかしくないくらいの、“こりゃ死ぬわ”という、両手を掴んで逃げ場をなくしながら両膝で頭を蹴り上げつつそのまま地面に叩きつけるという、えげつなさすぎる必殺技。
それでもまだ泣きながら殴り続けるジージャー…。
“痛みが増すほど、酔いも増す”、それだけあまりにも大きかった悲しみ。
このシーンは、いろんな意味で“痛い”です…。
死闘なんて言葉でもまだぬるい、凄絶な戦い。
それぞれの技の精度、“技の痛さ”ではドニーさんvsコリン・チョウ戦の方がレベルが高いですが、大技の炸裂度、技の美しさ、そして想いの強さ、全然負けてません。
1本の映画としては『チョコレート・ファイター』の方が上でしょうが、このラストバトルだけでも見逃し厳禁。
でも、こういう戦いは、やっぱりスクリーンで観たいよなぁ…。
チョコレート・ソルジャー RAGING PHOENIX [DVD]
[原題]Raging Phoenix2009/タイ/112分
[監督]ラーチェン・リムタラクーン
[製作]プラッチャヤー・ピンゲーオ/パンナー・リットグライ
[アクションスーパーバイザー]パンナー・リットグライ
[出演]“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン/カズ・パトリック・タン/Roongtawan
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●『導火線 FLASH POINT』(ウィルソン・イップ)