ビリー・ワイルダー、師匠の大傑作に挑む!?
今回は、監督作品としては4本目となるビリー・ワイルダーの『ワン・ツー・スリー』です。
主演のジェームズ・キャグニーはギャング映画で名高いですが、1本も観たことがないので、喜劇役者?と思ってしまうほど、ジャック・レモンも顔負けの名演。
とにかくよくしゃべる、ひたすらしゃべる、『ヒズ・ガール・フライデー』のケイリー・グラントには及ばないものの、かなりのハイレベル。
冒頭のくだりは、東西対立を笑い飛ばしてしまおうというテーマは、言うまでもなくお師匠さんエルンスト・ルビッチの大傑作『ニノチカ』。
ロシアの通商代表3人組のキャラなんかまさにそのまんまです。
ジェームズ・キャグニーが扮するのは、コカ・コーラのベルリン支社長。
アメリカ本社の社長から電話があり、娘がヨーロッパに行くのでベルリンでは君が観光案内をしてくれとのこと。
出世に目がないキャグニーはこれぞチャンス!とばかりに張り切りますが、その娘がとんでもないおてんば娘。
空港で出迎えた途端いかにとんでもないかをすぐに悟ったキャグニーですが、そこは社長の娘、機嫌を損ねるわけにもいきません。
しかし、娘が夜な夜な“鉄のカーテン”を越えて東ベルリンに遊びに行っているといい、さらに共産主義者の若者と結婚してしまったからさあ大変!(ちなみにこの娘は17歳にしてすでにこれ以前に3回の婚約経験あり)。
支社長キャグニーとしてはロシアにもコーラを売って売り上げを伸ばしたいという考えながら、社長は共産主義者に我がコーラを飲ませるなんてとんでもない!という考え。
それが、よりにもよって大事なお嬢さんが共産主義者と結婚。
しかも、社長夫妻がもうすぐヨーロッパ、そしてベルリンにやってくる、俺の15年間の努力は全て水の泡と消えるのか…。
いや、こんなおてんば娘のために今までの努力が無駄にされてたまるか!
ベルリン支社総力をあげての若者改造作戦が始まります。
でも、若者は心底民主主義を憎んでいるため、靴下一つ履かせるのも大事。
さらに、キャグニーと美人秘書の不倫や、おかしなロシアの3人組も絡み、110分くらい一気にハイテンションで突っ走ります。
ただ、ワイルダーの演出が冴えているというよりは、キャグニー一人の力によるところがかなり大きい。
共産主義者の若者に扮するのは、“荒野の七人”の一人ホルスト・ブッフホルツ。
そして、この映画はなんといってもラストのオチ。
このオチがやりたくてこの映画を作ったと言ってしまってもいいほど、最後の最後に一発決めてくれます。
それは観てのお楽しみ。
全編笑えますし、十分面白いですが、これを観ると『ニノチカ』の偉大さを再認識させられます。
[原題]One, Two, Three
1961/アメリカ/108分
[監督・脚本]ビリー・ワイルダー
[出演]ジェームズ・キャグニー/ホルスト・ブッフホルツ/パメラ・ティフィン
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