『高海抜の恋』(ジョニー・トー)

高海抜の恋

昨年の『奪命金』東京遠征に続いて、行って来ました大阪アジアン映画祭。
というわけで今回は、ジョニー・トー監督最新作『高海抜の恋』です。

笑えるキャラが何人かいて、特に序盤は場内爆笑の連続。
予告編だけ観ると、いかにも“泣かせる”ラブストーリーみたいですが、ちゃんと笑えるところがまずは素晴らしい。

そんな感じで序盤に散々場内を爆笑させておいて、結構早い段階で、切なさに一気に舵を取る瞬間が素晴らしい。

さっきまで声を出して笑っていたのに、一気に涙腺が決壊する。
場内の空気もここで一変する。

それでも、そこからひたすら切なさ一辺倒ではなく、主演二人のやりとりの中にも、その後も笑えるシーンがいくつもあるところがいいですね。

ドレミの音だけが狂ったピアノ、夕陽を追いかけるバイク、二人だけにわかる秘密の数字。

ノワール系ほど台詞は少なくはありませんが、今回も“言葉で説明する”なんて野暮なことはしません。
台詞の代わりに、ピアノの旋律が、歌が想いを語る。

そして、徐々に明らかになってくるテーマ。
“元通りにする”を越えて、新たな一歩を踏み出すということ。

『我左眼見到鬼』『マッスルモンク』『MAD探偵 7人の容疑者』『再生號』、ワイ・カーファイが一貫して描いてきたテーマ、どうなるかはわからない、それでも、一歩を踏み出さなければ何も始まらない。

明らかになる原題のⅡの意味、映画の力を借りて、新たな一歩を踏み出す二人に涙が止まらない。

特に唸ったのはあるシーン、凡百の映画なら、少なくとも抱き合って、さらにキスまでするでしょう。

それが、この映画では、指一本触れない。荷物を分けあい共に持ち、並んで歩き始める、たったそれだけ。

でも、二人に必要なのは、抱き合ってキスをすることではなく、共に荷を背負い、共に歩んでいくこと。

今回もお話はワイ・カーファイの影響が大ですが、『暗戦 デッドエンド』の“バスの中だけの恋人”のように、実はこういうさりげない恋愛シーンが抜群に上手いトーさん、今回も、細かい演出が冴えに冴える。

終盤はもう自分も含めて周りも泣きに泣いていましたが、最初にも書きましたように、基本的には場内爆笑の連続。しかも、雪ちゃんがいないのに!
いやー、たまりませんねもう。

必見。

 

高海抜の恋 (高海拔之戀II) (2012) (Blu-ray) (香港版)

[原題]高海拔之戀Ⅱ
2012/香港・中国/114分
[監督]ジョニー・トー
[脚本]ワイ・カーファイ/ヤウ・ナイホイ/ライカー・チャン/オウ・マンキッ
[出演]ルイス・クー/サミー・チェン/カオ・ユアンユアン/ホァン・イー/ウィルフレッド・ラウ/ワン・バオチアン

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