遅れ馳せながら、『インファナル・アフェア』組最新作、『傷だらけの男たち』観て来ました。
以前UPした「香港特區10周年電影選擧」でも作品賞を穫ったように、まさに10年に1本の傑作『インファナル・アフェア』、そのスタッフが再び集結し、主演がトニー・レオンに金城武とくれば、期待するなという方が無理。
さて、結果は…。
以下、ネタバレ全開。
未見の方は、ご注意下さい。
一言で言えば、大満足とはいきませんでした。
不満を書く前に、まずは大前提から。
今回は、なるべく情報を入れないようにしていたので、公式サイトや予告編も観てないですし、いつもお世話になっている方々の感想も、ちらっと目を通しただけで、読んでないに等しいです。
でも、完全にシャットアウトしたわけではないので、わずかに漏れ聞こえてきた情報から、こういう話だと思ってたわけです。
悪役トニーに恋人を殺された金城武が、トニーに復讐する。
全然違いました(笑)
でも、おかげでストーリーは知らないも同然で済んだわけですが。
オープニング、『傷城』のタイトルが出るまでは悪くない。
『インファナル・アフェア』もオープニングで一気に引き込まれますが、今回も出だし好調、緊張感を持ってタイトルまでなだれ込みます。
が、しかし。
問題点1。これが最大の問題点なわけですが、トニーと金城武が一緒に現場検証に行くシーン、金城武の脳内映像みたいな感じで、トニーの犯行シーンが流れるじゃないですか。
あれはやっちゃだめですよ。
金城武はアル中なので、酔っ払った状態の中で、“疑い”からくる“想像”を断片として出すならまだしも、あそこまで全部出しちゃうとは。
“これは犯人探しの映画ではない”という監督の明確なメッセージなんでしょうが、せっかくストーリー予想が全く外れ、どんな展開になるんだろうとわくわくしていたところに、映画序盤にして展開確定(笑)
あそこまで出してしまうと、実は~だったと後で覆せるレベルじゃないですからね。
でも、犯人探しの映画ではない、あらかじめ情報を出しておいて、人物の内面を描くんだ、傷ついた男たちの心を描くんだ、それならそれでもいいんですよ。
ここで、問題点その2。ナレーション多過ぎ。以前、「説明台詞」はいらないというエントリーをUPしましたが、その悪いパターン。
実際にスコッチを飲みながら演技したという金城武の酔っ払いぶりも悪くないですし(酔っ払っていてあんなに走れないとは思いますが…)、何よりトニーの演技は相変わらず最高峰。
世の女性陣がメロメロになっているという眼鏡姿で、目の動き一つ、手の動き一つで、さすがトニーの自然な演技をしているのに(アンディのそれよりはかなりましですが、キスシーンだけは『恋する惑星』から進歩なくぎこちない(笑))、必要以上の“言葉”が、せっかくの素晴らしい“表情”“動き”を台無しに。
内面を掘り下げようとするなら、言葉で語れば語るほどその底は浅くなるもの。
アンドリュー・ラウ監督ともあろう人がそれをわからないはずはないと思いますが、今思えば『デイジー』に悪しき前兆があったような(笑)
そして、問題点その3。
これも結構大きいですが、ラストの金城武とスーチーのシーン、激しくいらない。
あんなものは、決定済のハリウッドリメイクで加えるようなシーンですよ(もちろん改悪)。
ハリウッド映画でもないのに、なんであんなシーンを加える必要があるのか。
もっと言えば、額を撃ち抜かれているトニーの映像もまったく不要。
銃声を聞いた金城武の表情自体は悪くないですが、どんなに譲ってもあの金城武の表情で終わるべきですよ。
金城武を画面からフェイドアウトさせておいて、銃声だけ聞かせた方がより良いと思いますが。
さて、散々文句を言ってますが、じぁつまらないかというと、そこらへんの映画よりはずっと面白い。
でも、なんといってもアンドリュー・ラウ×アラン・マックですし、期待が大きかっただけに、、もっと良くなるはずなだけに、残念…。
女性陣含め役者は悪くないですし(スー・チーが素晴らしい!)、酔いそうになるカメラワークに勘弁してくれ~となりそうにはなるものの、同じく『インファナル・アフェア』組チャン・クォンウィンの音楽も素晴らしい。
そして何より、雰囲気はいいんですよね。
問題点全てに関係しますが、問題なのは脚本。
となると、戦犯はアラン・マックとフェリックス・チョンでしょうか。
最後に、シネコンの大スクリーンで香港映画が観れるなんて、金城武&エイベックスのおかげですね(悲しいかなトニーのおかげではない…)。
こんな大スクリーンで、『柔道龍虎房』や『エレクション』が観たかったなぁ(涙)
[原題]傷城
2006/香港/111分
[監督]アンドリュー・ラウ/アラン・マック
[脚本]フェリックス・チョン/アラン・マック
[音楽]チャン・クォンウィン
[出演]トニー・レオン/金城武/スー・チー/シュー・ジンレイ/チャップマン・トー/ユエ・ホア
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