『イップ・マン 葉問』を映画館で観たのが3月ですが、ようやく公開になったので、『イップ・マン 序章』観て来ました。
6月に発売されたBlu-rayツインパックももちろん買いましたが、どうしても最初は映画館で観たかったので、今日まで我慢していました。
というわけで、待ちに待った『イップ・マン 序章』です。
「パパが反撃しないから物が壊れるってママが怒ってる」のシーン最高、場内爆笑。
ウィルソン・イップは「切なさ」を描かせたら素晴らしい監督ですが、こういう緩急のセンスってこんなにありましたっけ?
一見シリアスなこういう香港映画で、ここまで映画館で笑いが起きるのも珍しい。
もちろんドニーさんのアクションは強く美しく溜息ものですし、他の師匠や金山找や三浦との闘いも素晴らしいんですが、工場の工員たちが作業中に思わず型が出てしまったり、工場が襲われた時に女性の工員が詠春拳というより力技で薙ぎ倒していたり、そんなシーンの方が印象に残っていたりします。
川井憲次による極上のテーマ曲に合わせて工員たちが葉問と一緒に稽古するシーンなんて、ヘタしたらドニーさんの闘い以上に燃える(笑)
これが『イップ・マン 葉問』との違い。どちらがいいとかの問題ではなく、どちらも好き。
そして、脇役たちが皆素晴らしい。
先に『イップ・マン 葉問』を観ているので、いつサイモン・ヤムが…になるのかとずっと身構えていましたが、そんなシーンはなかったですね。
今回も出番少な目の彼ですが、『孫文の義士団』でもそうだったように、「別に他の人でも務まるけどこの人が演じると存在感と重みが違う」安定した演技。
ようやく葉問との関係がわかったルイス・ファン演じる金山找も美味しいキャラ。
まあいろいろ悪さもしていますが、彼は彼なりの信念に基づいて生きており、家具を「弁償する」のくだりなんかいいなあぁ。
最初に書いたシーンもそうですが、葉問は「家具を壊さない」という条件下でしか闘うことすら許されず、壊した対戦相手も自ら弁償を申し出る、実は最強は葉問の奥さん(笑)
強い相手がいると聞けばすぐに手合わせしたい葉問ですが、いつも奥さんの顔色を伺い、外出すらままならない、ドニーさん可愛い(爆)
日本から参加の池内博之ですが、アクションは全部自分ではやってないでしょうが、いい感じでしたね。
あの絶対的権力関係の上下にありながら、ちゃんと膝を折って食事を葉問に出した三浦、真に武道を愛する者だからこそ、巡り会えた達人への心からの敬意。
そこには日本軍も中国人もなく、あるのはただの二人の武道家。
名を聞かれ「ただの中国人」と答えた葉問と同じように、「ただの一武道家」として葉問と相対した三浦。
闘いを終えた彼の顔に浮かんでいたものは、それは観てのお楽しみということで。
他では、ラム・カートンのキャラも美味しい。
警官として、いつも問題ばかり起こす武道家たちを最初は快く思っていなかったものの、次々に地元の武道家たちが金山找の道場破りに負けた後、葉問が地元の誇りを守ってくれたのが嬉しくてたまらない。
その後は日本軍の通訳となり、小物ぶりを発揮しますが、最後の誇りは失っておらず、命を賭けて葉問を守るようになる。
日本軍にボコボコにされて帰ってきても、俺のことなら大丈夫だからと、弱みも見せず、彼もまた詠春拳とは違う形で、一人の人間としてどんどん強くなっていく。
それに対し、事情は重々承知の葉問も多くを尋ねることはなく、ただ一言お礼を言うだけ。言葉はいらない。
さすがウィルソン・イップ、素晴らしい。
『イップ・マン 葉問』と違って“悪者”が日本人なので、確かにあっちほど素直に乗れない部分はありますが、それを差し引いても十分素晴らしく、最初の方に書いたような緩急のつけ方が今回は特にツボ。
待ちに待った公開なのに映画館は半分も埋まっていなかったと思いますが、これを映画館で観ずして何を観るというのでしょうか。
『導火線 FLASH POINT』ほどではありませんが、もちろんアクションが素晴らしい映画でもありますので、ぜひ映画館の大きなスクリーンで!
[原題]葉問
2008/香港/106分
[監督]ウィルソン・イップ
[音楽]川井憲次
[アクション監督]サモ・ハン
[出演]ドニー・イェン/サイモン・ヤム/池内博之/リン・ホン/ルイス・ファン/ラム・カートン
男ならこれで泣け! 何から何まで最高だけど、何よりも川井憲次の音楽が素晴らし過ぎる! 全編“燃えて泣ける”川井節が炸裂。 特にオープニングの曲はいきなり最高潮の盛り上がり。 詳しくはまた後日。 イップ・マン 葉[…]
2016.6.12 1回目 香港盤Blu-ray マックス・チャンとの惚れ惚れするような詠春拳対決も、マイク・タイソンとの異種格闘技戦(ドニーさんの構え最高!)も、何回でも観たいくらい最高だけど、ベストシーンがそのどちらでもなく、アク[…]
映画としては完全に蛇足。 ハートマン軍曹なんてただの邪魔。 でも、憎しみの下に嬉しさが隠しきれないスコット・アドキンスや完璧なブルース・リーなど見所はたくさんあるし、蛇足をもう一度締めるにはあの終わり方しかない。 ヤムヤム&[…]